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ビブリオバトル in 水道端図書館 ~芥川龍之介


7/27(土)に文京区水道端図書館で催されたビブリオバトルへ行ってきました。ビブリオバトルというのは、もともとは、京都大学のゼミで行われていた授業が、イベント性を帯びて全国に広がった書評バトルです。

ルールは簡単で、

①本の紹介者がお気に入りの本を持ち寄る。
②その魅力を”5分間”で観覧者に紹介する。
③どの紹介者の本が良かったかを観覧者の挙手で決定する。1番、票が高かった”本”がその回の”チャンプ本”になる。


その他には、観覧者から紹介者への質問は、参加者全員が、紹介された本を楽しめる内容であること。自分がその紹介者よりもその本のことを良く知っていても、紹介者のあげ足を取るような質問は厳禁。というように、あくまでも、和やかにというのが基本方針だそうです。

 ビブリオバトルの観覧もこれで3度目で、最初はどんなもんだろな~と緊張感がありましたが、かなり慣れて観るにも余裕がでてきました。
 主催の紀伊国屋書店から来ている司会役のエージェント(笑)は、いつも同じ方。発表者の中にも、観覧者の中にも以前に見た人がいました。っていうか、毎回、来てる人がいるみたい。私もそうですが、1度、行くとクセになるのかも。

今回のビブリオバトルは、発表者は7名。観覧者は30名ほど。水道端図書館では初の試みだそうで、芥川龍之介の作品限定で行われました。

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紹介された作品は以下の通り。



①トロッコ
<初出> 「大観」大正11年。

トロッコ (日本の童話名作選)トロッコ (日本の童話名作選)
(1993/03)
芥川 龍之介

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芥川が親交があった力石平蔵が提供した作品をもとに書いた作品。少年が、土を運搬するトロッコに興味を持ち、それに乗った時の嬉しさや怖さの感情をしみじみと描いている。

発表者は慣れた感じの女性で、落ち着いた口調が印象的でした。

特に、少年がトロッコを押せた時の情景描写が素晴らしいとおっしゃってました。原作者の力石は芥川の熱心なファンで、芥川が彼に校正の仕事を紹介したり、質問コーナーでは、二人の関連性などにも話がおよんでいました。


②鼻
<初出> 「新思潮」大正5年。


羅生門・鼻 (新潮文庫)羅生門・鼻 (新潮文庫)
(2005/10)
芥川 龍之介

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「今昔物語集」の「池尾禅珍内供鼻話」を材料としている。長すぎる鼻を気にしてどうにか短くしようとする僧の愉快な話。教科書には前述の「トロッコ」とともに頻出の作品。

発表者の男性は、元高校の国語の先生だったそうで、その時の試験に「鼻」を読んで、想像できるこの主人公の絵を描きなさいという問題を出したそうです。採点は描けば5点は取れたそうな…。そのような経験談が聞けるのも面白かったです。

③羅生門
<初出> 「帝國文學」大正4年。
羅生門羅生門
(2012/10/13)
芥川 龍之介

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時は平安末期の京都。死ぬか盗賊になるかの下人が、死体置き場となっていた羅生門で出会った一人の老婆。下人の心の動きを見事に描いた芥川文学の原点ともいえる作品。

発表者は女性で、スポーツなどに明け暮れて、読書から離れていた時に本棚からふと取り出して、感動した本だそうです。降り続く雨、揺れ動く人の心。一見、おどろおどろしそうな羅生門という作品ですが、芥川の文章は、その中の暗闇の中に色が見えるようで、とても美しいと感じたそうです。何か、ぐっとくる話ですね。

④雛
<初出> 「中央公論」大正12年。
雛
(2012/09/27)
芥川 竜之介

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明治期になって没落した旧家。その家にあった雛人形がアメリカ人に売り渡されることになり、雛人形が売られてゆく前夜の家族の心の動きを描いた作品。

発表者は、声もおごそかに、非常にまとまったお話をされる方でした。落ちぶれてゆく豪商を描くことで、その当時の時代背景と、古き日本の良いものが失われてゆく哀しみを著わしているように思われたそうです。また、ラストにイギリス人の子供が、雛人形の首をくるくる回して無碍に扱っているシーンがあるらしく、アメリカ人に売られていった雛と、その雛は同じ? など、その解釈が質問コーナーの話題に。

⑤舞踏会
<初出> 「新潮」大正9年。
舞踏会・蜜柑 (角川文庫)舞踏会・蜜柑 (角川文庫)
(1968/10)
芥川 龍之介

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美しい令嬢明子の初めての鹿鳴館での舞踏会。
ピエール・ロティが書いた「秋の日本」の中の「江戸の舞踏会」を下書きとした作品。

発表者はスタジオ・ジブリのアニメに出てきそうなオーラを持った老婦人。”こんにちは”から始まって、おもむろに老眼鏡をかけ話し出される様には、けっこう圧倒されてしまいました。

芥川の作品らしくない作品で、好きではないが覚えていた作品とおっしゃってましたが、確かに本文を少し朗読された部分からは、大正ロマンを感じました。鹿鳴館で舞踏会! それだけでも、素敵だ。

⑥西方の人
<初出> 「改造」昭和2年。
侏儒の言葉・西方の人 (新潮文庫)侏儒の言葉・西方の人 (新潮文庫)
(1968/11/19)
芥川 龍之介

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小説というより評論。昭和2年に枕元に聖書と遺書を残して自死した芥川の遺稿となった作品で、1.この人を見よ。~37.東方の人まで、彼が感じたクリスト(キリスト)の一生を綴っている。

発表者の男性は、大学教授風の男性。自殺との関係で、芥川は自分を自分で十字架に架けたのではないか、クリストは古代のジャーナリストなど、ちょっと難しかったけれど、大変、興味深い意見を言っておられました。

⑦黄梁夢
<初出> 「中央大学」大正6年。
黄粱夢黄粱夢
(2012/09/27)
芥川 竜之介

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タイトルは”こうりょうのゆめ”と読む。典拠となる唐の沈既済の「沈中記」は、「人生の栄枯盛衰も結局はむなしくはかない」という内容だが、芥川はそれを夢の中の栄枯盛衰も「夢だから、なお、生きたいのです」と強い意志の煌めきを著わしている。

発表者の女性は、この作品を模試の問題で読んだそうですが、テスト問題なのに感動してしまったそうです。人生は空しいとした「沈中記」とは、違うラストで結んだ「黄粱夢」に芥川の力強さを感じたそうです。


発表は、前半3名、後半4名の形式で行われ、それぞれにチャンプ本(作品)が選ばれました。
選ばれた作品は、
前半が、
「羅生門」
後半が、
「雛」「舞踏会」でした。

私は「羅生門」に一番、心魅かれましたが、色々な発表者や観覧者の意見を聞いて、改めて、芥川龍之介の才能を再確認させられたように思います。

ちなみに、私が好きな芥川の作品は「河童」です。
河童が生まれてくる予定のお腹の子供に、「生まれたいか、生まれたくないか」と尋ねて、「生まれたくない」と答えると、とたんにお腹がしぼんでしまうという、エピソードが面白くもあり、ちょっと皮肉な感じもして、とても印象に残っています。

河童 (集英社文庫)河童 (集英社文庫)
(1992/09/18)
芥川 龍之介

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さて、最後に今回訪問した水道端図書館について一言。
早川ミステリ、全巻所蔵! これは、素晴らしい! 本棚の前で思わずニヤニヤしてしまいました。
フリッツ・ライバーの小説を借りて大満足です。ビブリオバトル以外でも、また、行ってみたいです。
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ビブリオバトル in 本郷図書館


2/10(日)に文京区本郷図書館で催されたビブリオバトルへ行ってきました。ビブリオバトルというのは、もともとは、京都大学のゼミで行われていた授業が、イベント性を帯びて全国に広がった書評バトルです。

ルールは簡単で、

①本の紹介者がお気に入りの本を持ち寄る。
②その魅力を”5分間”で観覧者に紹介する。
③どの紹介者の本が良かったかを観覧者の投票で決定する。1番、票が高かった”本”がその回の”チャンプ本”になる。


その他には、観覧者から紹介者への質問は、参加者全員が、紹介された本を楽しめる内容であること。自分がその紹介者よりもその本のことを良く知っていても、紹介者のあげ足を取るような質問は厳禁。というように、あまりに白熱しすぎて、場の雰囲気が殺伐としたモノにならないような考慮もされているようです。あくまでも和やかに~が基本。



今回の紹介本は、村上春樹限定でした。紹介者は6名。観覧者は58名で、なかなかの盛況ぶりでした。実は私は村上春樹は「ノルウェイの森」しか読んだことがないので、村上マニアっぽい空気の中でちょっとビビってたりもしていたのでした。


*これが、紹介本のラインアップです。読んだことのない本がほとんどなので、既成概念などはなしに聞いたままを載せてみました。

①「ねじまき鳥クロニクル」



 紹介者さんの説明では、この物語は、主人公が何かネガティブなモノから嫁と飼い猫を取り戻す話で、この本は3つの柱からできているとか。

  その1.井戸 このキーワードが全編に出てくるそうです。
  その2.痛み
  その3.IQ84 登場人物の牛川というキャラにかぶる人が、「ねじまき鳥~」にも出てくるそうです。最新作のIQ84に過去の作品の登場人物を匂わせる人が出てくるというのは、かなり思い入れのあるキャラなんでしょうか。

②「使い道のない風景」



 村上春樹が訪れた海外旅行での感想をまとめたエッセイ。ただ、各ページに掲載された写真と、その文章には全く関連性がないそうです。写真が先か文章が先か、その答えは、図書館員の人にも意図がわからぬまま…の謎の作品。
 紹介者が中学3年生だと聞いて、びっくりしました。自分の考えをしっかり持っているなぁと。


③「羊をめぐる冒険」



 この羊が憑依した人物は、善悪とは関係なしに、大きなことを成し遂げる。最初はジンギス・ハーンに憑き、あとには児玉誉士夫(作中で名言されてはいないが、この人物であることは明らからしいです)
 紹介者は学者風の方で、村上春樹のことを理解しやすい森鴎外って表現されてました。面白いなと思いました。そういえば、前回、本郷図書館で催されたビブリオバトルのテーマは、森鴎外だったとか。この方はそちらにも参加されていたのかもしれません。


④「ダンスダンスダンス」



 紹介者は、実はこの本の1/4しか読めていないと聞いて、また、びっくり(笑)というのも、村上春樹の文章の表現が凄すぎて、1行読むごとにページを止めて、考え入ってしまうのだそうです。僕にとって、ストーリーは問題じゃなく、文章表現がこの本は素晴らしいのです! 感動です! と、かなりぶっ飛んだ紹介者でした。観覧者からの「私はあなたのプレゼンに感動しました」の声に爆笑。観覧者のちょっとしたコメントも面白かったです。
 

⑤「日い出る国の工場」



村上春樹が、色々な日本の工場見学した上でのエッセイだそうで、結婚式場の玉姫殿の見学記が面白かったそうです。玉姫殿は工場か? と疑問がでるところですが、村上春樹は結婚式場を新婚を作る場所として考えたのだそうです。登場してくる花嫁さんの冷めっぷりと、村上春樹の少し皮肉のこもった見かたも興味をひかれるそうです。

⑥「ノルウェイの森」



紹介者は、この作品は現代の若者の心情を瑞々しく描いた絶品の作と紹介されていましたが、この本は、私が唯一読んだことのある彼の大ヒット作でもあります。
実は、私はこの作品が素晴らしいと言われることがよく分かりません。何だか、エロっぽいだけだなぁというのが正直な感想。それなのに、村上春樹が世界的に評価されている理由って何なんだろう。それを知りたいというのが、今回のイベントに参加した理由の1つでもありました。確かに色々な人の意見を聞くと、何か他の作品も読んでみようかなって気にはさせられました。


1時間半ほどのイベントで、チャンプ本に選ばれたのは、「使い道のない風景」と「日い出る国の工場」でしたが、やはり、個人の思い入れの強いプレゼンをされた紹介者より、オーソドックスな説明をされた紹介者の方が票が良く集まった気がします。
私は、表現が素晴らしすぎて、紹介者が先を読めなくなってしまった「ダンスダンスダンス」を一番、読みたくなってしましましたが(笑)

次回の開催や開催内容はまだ未定だそうですが、次はラノベやミステリ本などのビブリオバトルも観てみたいです。紹介者や観覧者の層や白熱ぶりも全然違ったものになりそうで、それも面白そう。一応、アンケートに要望しておいたけど、実現されるかどうかは、図書館の方針次第。実現されれば、是非、観てみたいです。
     

本と挿絵



お気に入りの本にお気に入りの挿絵がついてる。これって、楽しみ倍増ですよね。

そんな風に文・挿絵共に充実していたのが、私が子供の頃に毎月、父が買ってきてくれた「少年少女世界の名作文学」でした。

昭和39年の9月に刊行され、全50巻の全集で、毎月1冊ずつ配本される形式の本でしたが、1冊の価格が480円。当時としては安い値段ではないけれど、父は頑張って50巻全部を揃えてくれました。

監修が川端康成っていうのが凄いと思うと同時に、訳者、絵師にも大物がずらり。おまけに
各話に幾つもの挿絵があって、本の裏表紙にも毎月、有名どころの名画が解説とともに掲載されていたという豪華な本でした。

 

この本の中でも、挿絵画家の伊藤彦造の絵は今でも印象に残っています。繊細なペンタッチにはため息が出てしまいそう。思えば、この本と挿絵に出合って、本好きに拍車がかかったのかも。

剣豪などのイラストが多いですが、彼のギリシャ神話の挿絵は、神々の荘厳な姿が繊細なペンで描かれていて、当時の私は、子供ながらにうっとりと見惚れてしまいました。

伊藤 彦造(いとう ひこぞう、1904年2月17日 - 2004年9月9日)は、日本の画家。大分県大分市出身。剣豪、伊藤一刀斉の末裔に生まれ、自らも剣の師範であった。朝日新聞東京本社で勤務中に同社の専属挿絵画家右田年英からイラストを学び、改めて画家を目指し日本画家の橋本関雪に師事する。(Wikより)


        ホメロス神話の挿絵
             

        平家物語から
         平家物語


  平家物語 この繊細なペンタッチ!
平家物語1  平家物語3

          「石の花」から ソビエトの童話です。可憐な横顔ですね。
       石の花



同じ全集の挿絵画家では池田浩彰も好きでした。

池田浩彰
 多くの児童文学に挿絵を残しているにもかかわらず、この作家の情報は非常に少ないです。かなり前にお亡くなりになったそうですが、 本の解説には、1925年、 大連(現在の中国の旅大市大連)に生まれる。独学で絵の道にはいる。
ロシア占領下時代の建築物が並ぶヨーロッパをおもわせる街、大連で培われた美意識と、日本的なるものへの憧れ、東洋と西洋が結合したような永遠のボヘミアンを理想とする生き方の中で、ロマンチズムに満ちた画風が生まれたとあります。高齢になってからは、絵筆は握らなかったとか。

池田浩彰さんに関しては、このブログの別記事(池田浩彰と少年少女文学全集の挿絵画家たち)でも触れています。


素敵な横顔ですね。顔にかかるレースの白がとても印象的です。この絵師さんは、全集と別の本でも沢山の挿絵を描いています。

                     2011021319.jpg

      こちらは、「シンデレラ」の挿絵です。

            img_865433_9738791_1.jpg



          お姫様?が、傅く男に何かの褒賞を渡しているんでしょうか。ちょっと気になるシーンです。
           


作家の中には作品の絵を自分で描いている人もいますが、そんな中でのお気に入りは、これ!

ウェブスター「足ながおじさん」のイラスト 主人公のジュディの学校生活の様子のユニークなタッチが本文を引き立てています。本文のジャービスおじさんへの手紙に添えられた絵。こんな手紙を受け取ったら、ジャービスさんでなくても、すぐに次の手紙が欲しくてたまらなくなってしまうかも。落第点を取って涙している姿が可愛い。

 

キャロル「不思議の国、鏡の国のアリス」 このイラストは巷でも絶大な人気ですが、”アリス”自体が、創作意欲をふんだんにかきたててくれるキャラですから、”アリス”と入力して画像検索しただけで、オリジナルとは違った、様々なアリスがパソコンの画面に現れてきます。その絵を見ていても、可愛いのから邪悪?なのまで様々で、けっこう、楽しいです。








3Dゲームの「Alice in nightmare」のイラスト。戦うアリス!




少年少女世界の名作文学の挿絵画家たちのイラスト以外にも、私が好きな挿絵は沢山ありますが、それらをずらっと紹介させていただくと、

トーベ・ヤンソン「ムーミン」シリーズ




白黒なのに、画面が色付みたいに鮮やかです。おっと、お化けがいる。


山田章博 十二国記のイラストは、小野不由美の文章にぴったり。


延王と延麒 風の流れを画面から感じてしまいます。




末弥 純 「ファファードとグレイ・マウザー」シリーズでこの絵師さんを知りましたが、グィン・サーガシリーズ、魔界都市シリーズ、パトレイバーと言った方が知っている方は多いでしょう。「ファファードとグレイ・マウザー」は小説もいいので、またプログで紹介するつもりです。この小説は、ヒロイックファンタジーの古典ですが、男性、二人主人公という珍しいパターンの物語です。

 



藤城誠治「銀河鉄道の夜」のイラストは印象的 光と影と色彩の妙が素晴らしく、目覚めながら夢を見ている感じ。影絵だっていうんだから、それも凄い。






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これは、可愛いですね
http://admin.blog.fc2.com/control.php?mode=editor&process=load&eno=8#



藤城さんは、また、広島の原爆ドームや東日本大震災などをテーマにした作品も作られています。
 空を舞う折り鶴やファンタジーの世界の小人たちが、笛を吹き、キャンドルを灯す様は、鎮魂と平和の祈りを静かに私たちに訴えかけているようです。


     134812733151513225732_DSC04074hi.jpg



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               奇跡の一本松の上でキャンドルを灯す小人たちが印象的です。



                         img_0 1247329594

         tennsinookurimono(l).jpg

 その他にも色々と好きな絵がありすぎて、一度には載せきれませんが、本当に心魅かれる絵ばかりです。
コミックやアニメまで手を伸ばしてしまうと、多すぎて、切りがないです。でも、また、それもおいおい、ブログに載せてみようかな。



     

消えた受賞作 直木賞編

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「シャナ」Ⅴを読み終えて、ちょっと休憩ってことで、別の本を手にとってみました。いや~、これがすごく面白かった。

「消えた受賞作~直木賞編」っていうタイトルで、ミステリ小説ぽいですが、そうではありません。

直木賞受賞作って、芥川賞作品とは違って、今では、古本屋や図書館でもその1/3ほどしか手に入らないのだそうです。モノによっては戦後1度しか、出版されなかった作品もあるとか。事情は、時代のニーズとか、作者の意向とか、短編が多いので1冊の本にし辛いとか、色々なのですが…。

これは、大学生時代にそんな直木賞の受賞作探しにハマって、プロの編集者も舌を巻くようなサイトを立ち上げてしまった作者(主宰者)が、”現在、入手困難でぜひ読んでみたい受賞作はどれか。”というアンケートを実施し、それを集計した上で、選んだ”幻の作品に近い”短編9編を載せた本なのです。

ラインアップはこんな感じ。

「天正女合戦」 海音寺潮五郎  
「雲南守備兵」 木村荘十

「蛾と笹舟」  森荘己池
「山畠」

「ニューギニア山岳戦」 岡田誠三

「刺青」    富田常雄
「面」

「執行猶予」  小山いと子
「虹」     藤井重夫


海音寺潮五郎、木村荘十、富田常雄(「姿三四郎」の作者ですね)のように”何をいまさら賞なんて…)という大御所の作者もいたそうですが、初期の頃の直木賞って今ほど、騒がれるような大きな賞でもなかったようで、それも受賞作が世に出回らなかった一因のようです。

この”幻の9作品”ですが、厳選されている作品だけあって、面白くなかったものは1つもありませんでした。

私が特に気に入ったのは、お茶様と大奥の女たちの黒百合をめぐっての心理戦に石田三成が絡んでくる「天正女合戦」
これって、今、ドラマにしても面白いかも。

他には、富田常雄の「刺青」が良かったです。

元極道の彼女としての虚勢を張るために、銭湯でみごとな刺青の入った裸体を見せていた少女に、その刺青を見せてもらうためだけ、お金を貢ぐ番台の男。少女の両胸にかかった蜘蛛の巣とその下の唐子の刺青の描写がすごくエロチシズムがあって、それでもドロドロしないのは、さすがに大御所。


この9作品の掲載の他に、直木賞に関してのおまけのトリビアみたいなものがついていたんですが、それも面白かったです。

例えば、

・唯一の辞退者、その名も山本周五郎。
・そんなのアリ? 連載中に受賞。
・直木賞候補作が3日後に芥川賞を受賞…松本清張の「或る”小僧日記”伝」
・落選作家の復讐、はたまた抗議…筒井康隆が、自身の落選への恨みか(笑)直木賞落選作家の苦悩を描いた「大いなる助走」を書いているそうです。ちょっと読んでみたいかも。
・小説はサイズ? なぜか受賞しないノベルズ…そういわれてみれば。

 ちなみに、直木賞とは縁も縁もなさそうな私の母校にも、直木賞作家が一人、いたのが発覚!

 難波利三「てんのじ村」

 コテコテの大阪モノですが、ちなみにこの作品も品切れ、重版未定になっています。
     

麻耶 雄嵩 「木製の王子」




「木製の王子」は麻耶 雄嵩(まや ゆたか)が書いたミステリですが、久々に面白かった…というか、かなり邪道~と思わせてくれた作品でした。

麻耶 雄嵩の小説自体が、ミステリなのに舞台が異空間になってたり、ワトソン役がホームズ役の探偵を、いつか殺してやろうと目論んでたり、主人公の少年、烏有(うゆう)が無意識に殺人を犯してたり、変な登場人物が多いのです。

特に彼の処女作にでてくる探偵”メルカトル鮎”の装束はセーラームーンのタキシード仮面そこのけなのに加えて、この作品、シリーズモノにも関わらず、第1作目のタイトルは「メルカトル鮎、最後の事件」で、ラストにはメルカトルは生首になってピアノの上に乗っかってるって…ありえないわ。

…で、「木製の王子」ですが、
ストーリーは、こんな感じ。

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「比叡山の山奥に隠棲する白樫家は、一点に収斂する家系図を持つ”閉じられた一族”その奇矯な屋敷が雪で封印された夜、再び烏有は惨劇を見た。世界的な芸術家・宗尚の義理の娘・晃佳の首が鍵盤の上に置かれていたのだ。関係者全員にあてはまる綿密なアリバイ。冷酷で壮絶な論理だけが真実を照らす」

ここで、
いきなりネタバレします。知りたくない方はご注意を。

* *

真相を言ってしまえば、この家族っていうのは、芸術家の宗尚が自分が所属する宗教団体のメンバーを集めて作った”擬似家族”だったわけですが、たった一人の異分子“魔”の介入によって、完璧な家族図が壊れ、ラストには壮絶なジェノサイドが起こる。その大量殺人の基幹になるのが、この家族の家系図です。


最初に殺されたのが“晃佳”。ここに彼女の弟だと名乗りでてきた、“魔”=“規禎”を加えて、家系図を逆図にすると、姉妹・夫婦の関係は逆転して、“晃佳”と “規禎”は夫婦となります。すると、
家族のほとんどがその血を引くことになるわけです。で、その人々は全員、“魔”と交わり教義に反した罪により、殺されてしまいました。生き残れた“宗伸”はどこかへ逃げていってしまいました。

何で家系図を逆図でみるかとか、何で“規禎”が“魔”なのかとか、この宗教団体の教義のことなどは、私の文章力ではとても長くなりそうで、説明は難しいっ。上の解説でさえ、何だか怪しい。

ただ、よくこんな設定考えるなぁってことと、破綻しそうな設定なのに、破綻してないっていうのは、この作家の才能なのかも。ミステリファンの方の中には、“金返せ!”っていう人もいるかもしれない。でも、私は雰囲気とか、色々と好きですけど。あ、それと作者は阪神ファンのようで、阪神ファンには犯人が誰だか分る仕掛けがしてあるそうですよ。

変わった世界と、本格推理のコラボを味わってみたい人にはオススメします。私は好きですがw

プロフィール

kazanasi

Author:kazanasi
絵画、小説を中心に観たり読んだり、自作で作ったり。サブカル全般に興味があります。暖かい時期には山登りもします。アナログとデジタルの間を行ったり来たりしてる人間です。


【kazanasiの本】




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