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主題が分かると絵画って面白い(神話編)


 絵画の鑑賞はフィーリング、事細かな主題まで事前に理解する必要はないと言う方もおられるかも知れません。けれども、その絵を描いた画家は、間違いなくその絵の中に、鑑賞者に見てもらいたいと思う主題を忍ばせているものです。

 例えば、神話をモチーフにした絵画なら、ユピテル(ゼウス)とアポロ(アポロン)が親子であることを知っていても、アポロはユピテルの正妻ユノ(ヘラ)の子供ではなく巨人族の娘レトとの間の子であるとか、美の女神、ヴェヌス(ビーナス)が、泡の中から生まれたと聞いたことがあっても、その泡は天空神ウラノスの生殖器を息子のクロノスが切断した時に滴った精液が海に落ちて出来た泡だと知っている人は多くはないでしょう。そのせいで、この女神のまわりには愛だけではなく、いつも背徳とか嫉妬、残酷などの感情がつきまとっているのです。

 神話の登場人物の出生や彼らにまつわる出来事を知っていれば、絵画鑑賞はもっと面白くなるはず! そこで、神話をテーマにした何枚かの絵を紹介したいと思います。

ユピテル(ゼウス)

その名は「天なる父」をあらわすローマの主神。稲妻を武器に使い鷲を傍に従える。ただ、ユノ(ヘラ)という正妻がいるにも関わらず、多くの女神、人間の女性を誘惑して数えきれないほどの子供をもうけている。手くせが悪い神である。

アングル 【ユピテルとテティス】




これは英雄アキレウスの母テティスが息子のためにトロイア戦争の戦局をめぐって、頼みごとをしにきた時を描いた絵。ユピテルは堂々とした姿だが、以前、彼がテティスを誘惑しようとしたこともあり、画面の端に嫉妬に燃えるユノの顔が見えるところが怖い。


ユノ(ヘラ)

ユピテルの正妻で最高の女神。けれども、発展家の夫のせいで猜疑心の強い嫉妬深い性格。そんな二人の間にも、火の神ウルカヌスと軍神マルスという息子があった。もっともユノはウルカヌスを一人でもうけたという話もあるのだが(…え)

アングル 【ユピテルとユノ】




ユノがユピテルと交わす愛の情景。ユノが胸の下にまいているのは、ウェヌス(ビーナス)からの借り物の帯で、女性の魅力を高める力を持つ帯。そのせいかユピテルの表情が何となくだらしない。


ユピテルは驚くほど多くの女性と浮名を流しました。たいていはユノの嫉妬を受けて、酷い目に遭うことが多かったようですが、そんなエピソードを主題に様々な絵画が描かれています。

ティツィアーノ【エウロペの略奪】




ユピテルは地中海の東、フェニキアの王女、エウロペを見染め、さっそく牡牛に姿を変えて、彼女を略奪。クレタ島で我物にしてしまった。エウロペは彼の間に3人の子をもうけ、その時の牛が牡牛座になった。


クリムト【ダナエ】




アルゴスの王アクリシオスは、自分が娘ダナエの子に殺されるであろうと信託を受け、彼女を青銅の塔に閉じ込めてしまった。しかし、彼女を見染めたユピテルは金の雨に姿を変え、まんまとダナエと交わった。欲望のためには、神だけあって変幻自在である。こうして生まれたのがペルセウスである。やがて成長したペルセウスが競技で投げた円盤が居合わせたアクリシオスにあたり、信託は果たされてしまった。

クリムトの作品では、黄金の雨となったユピテルを受け入れるダナエは恍惚ともいえる表情を浮かべている。

コレッジオ【ガニュメデス】

 トロイア王家の祖、トロスの息子、ガニュメデスは目を見張るほどの美少年であった。趣味の広いユピテルが、天上の酒宴で酒杯を捧げる従者にしようと聖なる鷹か自分自身かが鷹に変わって彼を誘拐した。後にユピテルは彼の父のアポロを遣わし、不死の馬を贈ったという。なお、酒の入った壺をもったガニュメデスの姿が水瓶座となり、彼をさらった鷲が鷲座となった。

 また、ユピテルは飽きもせず、アルゴス王の娘イオの美しさに惹かれ、雲に姿を変えて誘惑したが、妻のユノの怒りに触れてイオを牡牛に変えた。疑い深いユノの散々の攻撃にさすがのユピテルも最後は陳謝し、イオはやっと人間の姿に戻れるようになる。

コレッジオ【イオ】





 ユピテルの発展家ぶりは呆れるほどで、ユノが嫉妬深くなってしまうのも仕方ないのかもしれませんが、誘惑された女性たちの恍惚の表情は、さすが神! といったところでしょうか。特にクリムトのダナエはぞくりとするような色香を放っていますね。


 ユピテルを先頭に、やりたい放題の神々ですが、神といえども、運命を己の望むままに変えることはできなかったようで、その物語は、欲望、嫉妬、羨望、憧憬、恐怖等など、人間臭くもある彼らの行いは、画家たちのかっこうのモチーフとなったのは言うまでもありません。以下は有名どころの神々とそのエピソードのほんの一部ですが……


プーサン【詩人の霊感】

太陽神アポロは、ご存じの方も多いはず。火の車に乗り、空をかけめぐる姿は、映画やアニメなどにもよく登場し、まさに神の中の神といった具合ですが、その息子、フェアトン(パエトーン)が彼に借りた火の車に乗り、オリンパスの山々を焼き尽くしたという話は特に有名です。
 また、女神ディアナは彼の双子の妹であり、二人そろって弓の名手でもあります。彼はギリシャ神話では太陽神とも同一視され、音楽の神でもあり、姿は男性美に満ちた理想的な姿として描かれることが多いのですが、父の好色の血はさほど受けついていないようです。




この絵では、アポロが、詩や芸術の女神ムーサと愛の天使クピドを従え、詩人に霊感を与えてる姿が描かれている。

クリムト【パラス・アテナ】ミネルヴァ(アテナ)

 ギリシャのアテナと同一視される最高の女神。知恵と諸芸術をつかさどる女神ですが、その出生は凄まじいものがあります。ユピテルの最初の妻(ユノとは違う)が身ごもった時、彼女が次に産む男児がユピテルの王座を奪うと信託を受け、ユピテルは何と! 妻を呑みこんでしまいます。月の満ちた時、火神ウルカヌスがユピテルの額を斧で叩き割ると、そこから完全武装したミネルヴァ(アテナ)が飛び出してきました。びっくりですね。彼女は戦略の女神であり、機織りの女神、アテナイ市の守護神でもあります。




クリムトが描いた彼女の胸に描かれた怪物メデューサの首は、英雄ペルセウスの怪物退治に知恵を授けたことのお礼にもらったものである。持ち物は知恵の象徴のフクロウ。


ボッテチェリ【ウェヌスの誕生】ウェヌス(アフロディテ、ビーナス)


ギリシャのアフロディテ(ビーナス)と同一視される愛と美と豊穣の女神です。彼女は火神ウルカヌスの気まぐれな妻でしたが、軍神マルスと通じ、その間に生まれた子供が愛をつかさどるクピド(キューピット)とも伝えられています。こちらも巷では知らない人がいないほどの知名度の高い女神です。




ボッテチェリの名作で彼女に風を送るのは、西風の神ゼフュロス、彼が抱くのはニンフのクロリス、またウェヌスに衣をかけているのは、季節の女神ホーラである。彼女がホタテ貝に乗るのも通例である。恥じらいを含んだ乙女という図柄だが、中にはおよそ恥じらいとは程とおい奔放なポーズのウェヌスも少なくない。

ベラスケス【鏡の前のウェヌス】



クピドに鏡を持たせて自分の姿に見入るウェヌス。ただ、鏡の中の表情は少しやつれたような、老けたような……。少し意味深な感じがする絵です。


ジェラール【アモルとプシュケ】クピドとプシュケ

普段は愛の使者であるクピドが、ウェヌスの嫉妬をかうほどの美貌の王女プシュケと恋におちた物語があります。

クピドは彼を神だと知らないプシュケを谷間の宮殿に連れてゆきそこで夫婦になりました。けれども、会うのはいつも暗闇なのを不審がったプシュケがクピドの姿を見てしまったことから、プシュケは罰を受け、冥界をさまようようになり、開いてはいけない冥界の箱を開いてしまった彼女は永遠の眠りについてしまうのですが……最後にクピドの愛が彼女の眠りを解いて二人は結ばれるってな話です。



ジェラールの絵は、愛の力で目覚めたプシュケとクピドと永遠に結ばれるという主題のもとに描かれた絵で、神話編では私の一番のお気に入りの絵です。
この絵は、美しい絵ですが、2度までも好奇心に負けるプシュケの人間の弱さを描いた寓話としての意味合いももっています。


ジェローム【ピュグマリオンとガラティア】

キュプロスの王ピュグマリオンは女性不信で永く独身を守っていましたが、彼は自分が造った象牙の女性の彫像に恋をしてしまったのです。そして、「私にこの像に似た乙女を与えてください」とウェヌスに祈る王に女神は快く願いを聞き届けてくれたのです。




 王が彫像に口づけすると、彫像の乙女は目を開いた。王はこの乙女にガラティアと結婚した。
 ジェロームが描いたガラティアは王のアトリエで今まさに生を得ようとする瞬間だが、彼女の足元はまだ堅く冷たい彫像のままである。右側上に愛を司るクピドの姿が描かれていることも、この二人が結ばれるであろうことを暗示している。


いかがでしたか。ジェロールの絵のガラティアの固い足元が生足に変わってゆく様の表現! ピュグマリオンと同じに彼の絵画からもガラティアのような乙女が生まれてきそうです。

主題から見る絵画ってすごく面白いと思いませんか。また、私も色々と勉強してみたいと思っています。



参考文献
西洋絵画の主題物語Ⅱ 神話編 美術出版社


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kazanasi

Author:kazanasi
絵画、小説を中心に観たり読んだり、自作で作ったり。サブカル全般に興味があります。暖かい時期には山登りもします。アナログとデジタルの間を行ったり来たりしてる人間です。


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