ルーブル美術館展~地中海四千年物語~を観に行ってきました



7/26(金)に、上野の東京都美術館で催されているルーブル美術館展~地中海四千年物語を観に行ってきました。
今回は、先に催された、東京都美術館の”学芸員、大橋奈都子さんによる文化講演会にも参加し、展示物の ”事前の知識” と ”無料鑑賞券”(思わぬ特典!) をゲットしてあったので、ちょっといつもとは違った視点で、展来会に臨むことができました。

ルーブル美術館展の見どころは、フランスのルーブル美術館の古代ギリシャ、古代エジプト、古代オリエント、イスラム、絵画、彫刻、工芸品、素描、版画の全8美術部門37万点の収蔵品の中から「地中海」をテーマにして選ばれた200点以上(ほとんどが日本未公開)を集めた展示物を序章(紀元前2000年~)から第五章(19世紀)までに分け、西洋と東洋がダイナミックに交差した四千年にも及ぶ「時間と地域を越える軌跡」を鑑賞できることです。

 東京都美術館学芸員の大橋さんのお話でも、彼女自ら、ルーブル美術館に何日も出向いて、展示物に関しての綿密な打ち合わせをされたそうで、力の入れようがよく分かりました。


 「ルーブル美術館展」を観に行ったのは、金曜の午後4時過ぎだったのですが、夏休みということもあり、館は、老若男女、様々な人たちでけっこう混雑していました。ただ、小学生が展示物のケースの前を占領して、お絵かきボードで展示物をスケッチしていたのには、ちょっと閉口しました。夏休みの自由研究なのかな? スケッチするのは良いけれど、ちゃんとマナーは守って欲しかったです。その小学生の隣にいた私が親と間違えられて、監視員さんに注意された……何でやねん!!

 展示物は、最初は工芸品がほとんでで、時代が後に進むにつれて絵画が多くなってゆきます。200点全部は、とても、紹介しきれませんが、序章から、印象に残った作品を、紹介したいと思います。


Ⅰ.序: 地中海世界 自然と文化の枠組


古くから様々な民族の戦いの場になってきた地中海も、同じ地中海性気候を持ち、小麦、オリーブ、ワインといった産物の交易は盛んに行っていました。ここでは、交易の起点となったロードス、クレタ、キプロス、シチリアなどからの地域的関連性を出土品によって紹介してありました。

highlight_wp12.jpg               オリエントの女神、ネコ科の動物の頭部、二つの女性の頭部、ロゼットbc630-620頃
            
「泳ぐ乙女の形のスプーン」 紀元前715~656年、エジプト      垂れ飾り紀元前630-620頃
主に祭礼用に使われた物。                          カミロスの共同墓地、ロドス島、ギリシャ
この形のものは沢山見つかっている。                    猫の頭と2人の女性の顔がついている
         
         
         

               キプロスの杯、エジプト様式による神話の戦闘場面bc750頃

キプロスの杯、通称”ダリ”の杯、エジプト様式による神話の戦闘場面紀元前750頃、キプロス島
フェニキア人による作だが、図柄の敵を討つファラオやスフィンクスはエジプト的で、民族間の交易があったことがうかがえる。


Ⅱ.地中海の始まり、前2000年から前1000年記までの交流

 交易とともに、素材や技術が伝わり、神話や東方のフェニキア人のアルファベットからラテン語やギリシャ文字も誕生しています。ここでは、初期の交流によって作られた工芸品などを展示してありました。
      1ソース入 bc2200一番古い             1トードの宝物、銀杯             
        柄と注ぎ口のついた容器                     トードの宝物:銀杯
通称「ソース入れ」、紀元前2200~2000頃、ギリシャ         紀元前1901~1866年頃
        今回の展示品で一番古い物                 ルーブルの至宝の一つ



  赤像式クラテル:エウロペの略奪bc4世紀        黒像式アンフォラ 女神アテナ
    赤像式クラテル:エウロペの略奪                   黒像式アンフォラ:女神アテナ        
    紀元前4世紀                              紀元前7~6世紀
    水とワインを混ぜるための壺   


 ギリシャの壺絵に施された黒像式技法(BC7~6)と赤像式技法(BC5)は、ネガとポジの関係にあります。黒像式は、地の部分を黒く塗りつぶし、先のとがった道具でその輪郭や、内側の細部を線刻する技法です。また、赤像式では、黒以外の色での彩色も容易になり、それまではフリーズ状(横向きで、一列に並べる)に描かれていた人物の表現や配置も、3次元的に描くことができるようになりました。



                彫像断片 ディアデマ(宝石入帯状髪飾り)を冠したエジプトの地母神意イシスの頭部,エジプトの聖牛アピスとギリシャの神々が融合して生まれた混合神セラピスの頭部
             エジプトの聖牛アピスとギリシャの神々が融合して生まれた混合神セラピスの頭部、
             彫像断片:ディアデマ(宝石入帯状髪飾り)を冠したエジプトの地母神意イシスの頭部
             カルタゴ、チュニジア。150~250年。

             高さ1m以上もあるとても大きな展示物。船の帆飾りや、彫像の1部だったとか。



Ⅱ.統合された地中海、ギリシャ、カルタゴ、ローマ

紀元前4世紀のマケドニア王国の遠征により、エジプトをはじめオリエント世界のギリシャ化が進む。また、共和制ローマとアフリカのカルタゴの間にポエニ戦争がおこり、勝利したローマによって地中海世界が唯一統一された時代。プロメテウスの伝説が刻まれた石棺
プロメテウスの伝説が刻まれた石棺:240年頃
南仏で見つかる。粘土から人間を創造したギリシャのプロメテウスの神話をあらわしたもの。

      ひげのある男の頭の形をしたペンダント、bc350-前200     イシス女神の姿で表されたエジプト女王クレオパトラ7世、(在位前51-前30年)
    ひげのある男の頭の形をしたペンダント        エジプト女王クレオパトラ7世(在位前51-30年)                        
    カルタゴ、チュニジア、紀元前350-前200     イシス女神の姿をしている。    
    この地方はユニークなデザインが多いです!


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   この石碑に記された人形のような絵は、タニトという、カルタゴ、チュニジアの豊穣の女神を形どっているそうですが、同時にこの地方の墓石には、タニトと共に子供の姿が描かれていることが多いとか。それに関しては、子供を神への生贄にしていたのではないかという説が有力なようです。う~む……。

           水槽の床モザイク?:魚のいる海の中で遊ぶキューピットたち、250年頃
            水槽の床モザイク?:魚のいる海の中で遊ぶキューピットたち、250年頃
            ウティカ、チュニジア


Ⅲ.中世の地中海、十字軍からレコンキスタへ、1090-1492

 聖地エルサレムの奪回を目的に始まった十字軍により、もたらされた西洋と東洋の異文化交流。ここでは、それらの工芸品や工芸技術を展示してあります

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        聖ジョスの骸布:トルクメニスタン、あるいはニーシャープール(?)イラン、950年頃
        2頭の向かい合う象で装飾され、中央アジアのトルコ人地方総督の名前がアラビア語で記されている。

            恋する男女が描かれた杯:剣を振りかざす騎士とその恋人1300-1400
                 恋する男女が描かれた杯:剣を振りかざす騎士とその恋人:
                 キプロス、1300-1400年頃、
                 可愛いですね!これは、なんか好き。
                 イスラム文化の技法で描かれた西洋の騎士の姿がメルヘンチックです
  

                 
Ⅳ.地中海の近代―ルネサンスから啓蒙主義の時代へ―、1490-1750

十字軍の遠征の後に地中海を支配したのは、オスマン帝国でした。その影響で、東洋の西洋趣味と、西洋のトルコ趣味など多様な芸術が生まれました。


    imageCAUY46GV.jpg            エジプトの最後の女王クレオパトラの自殺、ベルタン、1690
    「煙草入」:ガブリエル・ガロワ(金銀細工師)   「エジプトの最後の女王クレオパトラの自殺」 
     1738-39年頃                  ベルタン、1690年
     東洋の西洋趣味                    蛇が胸にっ! 苦悶の表情が艶めかしい



 トルコ風衣装のイギリス商人レヴェト氏と、クリミアの元フランス領事の娘グラヴァーニ嬢、1740、リオタール
 「トルコ風衣装のイギリス商人レヴェト氏と、クリミアの元フランス領事の娘グラヴァーニ嬢」
 ジーン・エティエンヌ・リオタール、1740年
 西洋のトルコ趣味




Ⅴ.地中海紀行、1750-1850年

18世紀の西洋では、イギリス貴族による教養を深めるためのイタリアへのグランドツアー」やボンペイなどの遺跡の発掘のために、地中海世界への憧れが急速に高まりました。この終章では、そんな芸術家たちの瑞々しい感覚を追体験することができます。

そして、これが、今回の展覧会の目玉「”通称”ギャビーのディアナ」100年頃の作品です。

18世紀、ローマのギャピーで、画家のハミルトンによって発掘されたローマ時代の作品です。清楚な佇まいや信奉者から贈られたマントを優雅に肩にかける仕草の狩りの女神アルテミス。
ルーブルに収蔵されてから、館外に出るのは今回が初めてだそうで、まさに箱入り娘だったのですね。



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           どの位置から眺めても、美しいです。




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        「二重式懐中時計”通称ディ・ダルジェ”」1815年
        アルジェリア大守、エルフセインからフランス王、シャルル10世に贈られた懐中時計



    ハイディ、ギリシャの若い娘、イギリスの詩人バイロンによる「ドン・ジュアン」の登場人物、コロー、1870-72
         「ハイディ」:ギリシャの若い娘、イギリスの詩人バイロンによる「ドン・ジュアン」の登場人物
          恋人との仲を邪魔されたようで、仏頂面をしていますね(笑)
          カミーユ・コロー、1870-72年



バルコニーにいるアルジェのユダヤ女性たち、シャセリオー、1849
       「バルコニーにいるアルジェのユダヤ女性たち」 テオドール・シャセリオー、1849年。
       
       シャセリオーは、日本ではあまり馴染みのない画家ですが、新古典主義のアングルの弟子でした。
       後には、ドラクロアに傾倒しアングルの元を離れたのですが、エキゾチックなタッチと、
       対象を仰ぎ見るようなローアングルな視点から描かれた画面には、映画の1場面のような臨場感が
       生まれています。
 



       ルーブル美術館展は、9/23まで上野の東京都美術館で開催されています。
       展示物も多く、とても見応えのある展覧会です。詳しくはこちらのHPで
            ↓
       ルーブル美術館展2013




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赤像式クラテル:エウロペの略奪

> nipponjinさま

面白い情報をありがとうございます。
ユーロ紙幣ですか! ヨーロッパの語源は、「エウロペの略奪」で、ゼウスがエウロペを略奪して連れて行ったのが、クレタ島で、その周辺の地域もひとまとめにしてエウロペ(ヨーロッパ)と呼ぶようになったそうで、それを考えるとユーロ紙幣のデザインにはぴったりかもしれませんね。
調べてみると、ユーロ紙幣の変更と仕様についての説明の載ったサイトがありました。

http://eumag.jp/question/f0313/
私がブログに載せた赤像式クラテルと新ユーロ紙幣の写真も載っていました。こうやって説明を読んでみると、紙幣というのも美術作品なのだなぁと思ってしまいました。
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絵画、小説を中心に観たり読んだり、自作で作ったり。サブカル全般に興味があります。暖かい時期には山登りもします。アナログとデジタルの間を行ったり来たりしてる人間です。


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