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プーシキン美術館展に行ってきました


9/4(水)に横浜美術館で催されている「プーシキン美術館展」に行ってきました。


プーシキン美術館は、ロシアの首都モスクワの中心地に位置し、エルミタージュ美術館とならんで、世界的な西洋絵画コレクションを誇る国立美術館です。なかでも、エカテリーナ2世らロマノフ王朝の歴代皇帝や貴族、19世紀の産業発展で財をなしたモスクワの大富豪たちが収集した印象派からマティス、ピカソまで、屈指の名品を揃えたフランス近代絵画のコレクションは極めて高い水準を誇ります。

今回のプーシキン美術館展は、そのコレクションの中から17世紀の古典主義、ロココから19世紀後半の印象主義、ポスト印象主義の計66点を集めた展覧会です。

横浜美術館を訪れたのは、朝一の10:00でしたが、すでに美術館前には、観覧者の長い列が! 会期が9/16までとあって、やはり込み合っていました。それでも、鑑賞するのに困るほどではありませんでした。


では、その中から印象に残った数点を紹介してゆきましょう。

第1章 17・18世紀 古典主義、ロココ

入口を入って、間もないうちに目に飛び込んでくるのがこの絵です。

ニコラ・プッサン アモリびとを打ち破るヨシュア 1624-25年頃
ニコラ・プッサン アモリびとを打ち破るヨシュア 1624-25年頃

プッサンは17世紀フランス古典主義を代表する画家。この絵は、『旧約聖書』のなかで、モーセの後継者ヨシュア(画面左下)が「約束の地」カナンを征服する場面。ヨシュアは、征服の際に住民たちを皆殺しにしたとか


ジャン・パテスト・サンテール 蝋燭の前の少女1700年頃
ジャン・パテスト・サンテール 蝋燭の前の少女1700年頃

 サンテールは、ロココ美術萌芽期において特に評価された画家。蝋燭の淡い灯りに照らされた少女の優しい表が印象的でした。蝋燭というと、この展覧会には絵は出ていませんでしたが、古典主義のラトゥールを思い出しますが、サンテールの絵の方が温かな感じがしますね。

(参考)ラトゥール「悔悛するマグダラのマリア」 
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               フランソワ・ブーシェ ユピテルとカリスト 1744年
               フランソワ・ブーシェ  ユピテルとカリスト 1744年

18世紀ロココ芸術を代表するブーシェの作品。色彩が鮮やかですね。

女神ディアナの従者カリストを我がものにしようと、ディアナに扮して近づくユピテル。どんなに上手く女装しても、後ろに描かれた鷲の姿でユピテルだとバレてしまいます。
ユピテルを描いた神話画は沢山ありますが、ある時には”牡牛”、また、ある時には”金の雨”だったり、この「ユピテルとカリスト」では、”女装”と、欲望を満たすためのユピテルの変身には、驚かされてしまいます。さすがは全能の神!

         マルグリット・ジェラール 猫の勝利 1785年 
         マルグリット・ジェラール 猫の勝利 1785年

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       ユベール・ロベール ピラミッドと神殿 1780年頃


「猫の勝利」の作者、ジェラールは、ロココ時代の代表的な画家、フラゴナールの妻の妹で、フラゴナールに学んだ画家。いかにも、ロココ時代らしい、宮廷のサロン風の優美で可愛いらしい画風。

「ピラミッドと神殿」は、”廃墟のロベール”とも呼ばれ、廃墟画でも有名なロベールの作品。ギリシャの神殿風な建造物と、エジプトのピラミッド。同時には存在しない物を同一画面に描くことで、不思議な雰囲気を醸し出しています。廃墟画にしても、このような空想的建造物にしても、その中にロベールは、必ず一般人の姿を描きこんだそうです。鑑賞者を絵の世界に誘う効果を狙ってのことでしょうか。


第2章 19世紀前半 ロマン主義、新古典主義、自然主義


ロマン主義とは、優美なロココや教義的な神話をテーマとして扱った古典主義とは違をなし、抑圧されてきた個人の感情、「憂鬱」・「不安」・「動揺」・「苦悩」・「個人的な愛情」に移行していった画風。

また、新古典主義は、ロマン主義とはまっこう対立し、デッサンと形を重視し、理性を通じた普遍的価値の表現を理想とした。

自然主義では、理想化・空想化・美化しない、現実的描写。題材はミレーにみられるような農村の生活など、庶民を描いたものも好まれた。



              ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル 聖杯の前の聖母 1841年
            ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル 聖杯の前の聖母 1841年

新古典主義の巨匠アングルによる、聖母像の傑作のひとつ。アングルの描く女性の顔って本当に気品があって素敵ですね。マリアの後ろには、時の皇帝ニコライ1世とアレクサンドル皇太子をたたえるべく、2人と同名の聖人が描かれています。

ジャン・レオン・ジェローム カンタウレス王
             ジャン・レオン・ジェローム カンタウレス王 1859-60頃

伝説によれば、カンタウレス王は、自分の妻ニュッシア(別伝によればルド)の美しさを自慢するあまり、友人のギュゲスに妻の裸体を見させた。怒った妻はギュゲスに対し、自殺するか王を殺して王位と自分とを我が物とするかを迫ったという。
そのシーンをジェロームは、お得意の美しい女性裸体の後姿を用いて描いています。


      ドラロッシュ エドワード4世の息子たち

叔父により、ロンドン塔に幽閉された二人の兄弟の不安な表情が、哀しいですね。           
つい最近の2013年4月7日に、長年、行方が謎になっていたこの二人の遺骨が、実際にロンドン塔で見つかりました。

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            トマ・クチュール 仮面舞踏会後の夜食会 1855年頃 

 宴会後のけだるそうな雰囲気がよく出ていますね。見ているうちに、思わず笑みがこぼれてしまうような一枚です。 
   

第3章 19世紀後半 印象主義、ポスト印象主義 


印象主義の作品には、写実主義などの細かいタッチと異なり、光の動き、変化の質感をいかに絵画で表現するかに重きを置き、絵画中に明確な線が見られないことも大きな特徴である。また、それまでの画家たちが主にアトリエの中で絵を描いていたのとは対照的に、好んで屋外に出かけて絵を描いた。


クロード・モネ 陽だまりのライラック 1872-73年
   クロード・モネ 陽だまりのライラック 1872-73年

パリ郊外の町アルジャントゥイユの、モネが暮らした家での情景だと思われます。淡いピンクの色のライラックと木漏れ日の様子が、印象主義特有のタッチで描かれ、まるで空気までが揺れているよう。この絵は、特に好きな1枚でした。


           ピエール=オーギュスト・ルノワール ジャンヌ・サマリーの肖像 1877年
          ピエール=オーギュスト・ルノワール ジャンヌ・サマリーの肖像 1877年


「プーシキン美術館展」の宣伝で、イメージモデル? にもなっているジャンヌ・サマリーは、コメディ=フランセーズの花形女優で、1870年代後半のルノワールのお気に入りのモデルでした。当時の肖像画には珍しい暖色系のピンクの背景で、ルノワールの印象派時代最高の肖像画とも評されます。20歳になったばかりの蕩けそうなジャンヌの表情が魅力的です。

この絵の前には、さすがに人だかりができていました。あるTV番組で、ジャンヌの洋服の青が、斜めから正面に移動しながら観てみると、正面に行った時にふわりと浮き上がるように思えるって言ってました。確かに、そんな感じもしました。柔らかなタッチの光の表現が、ちょっとした魔法を使うのかも。


     ルイジ・ロワール 夜明けのパリ
     ルイジ・ロワール 夜明けのパリ 1880年後半ー1890年前半

ロワールは、ほとんど日本でも名前の知られていない画家の一人ですが、このプーシキン美術館展でじわじわと人気があがってきた絵で、横浜美術館の担当学芸員の松永さんのイチオシの絵でもあるそうです。
私はたまたま、横浜美術館を訪れた日の前日の朝日新聞の記事で、このことを知ったのですが、その記事の概要はこんな感じ。

 ”ルイジ・ロワールの「夜明けのパリ」は、百数十年前のパリの街角から、早朝の肌寒さや雨あがりの潤った空気が伝わってくるような逸品だ。だが、その画家は「新潮世界美術辞典」にも名前が載っていない。それが、今、見た者の心をつかみ、じわじわとファンを増やしている。横浜美術館の学芸員の永松さんは、その美しさの裏には、印象派の技法とともに、写真の影響をみる。ロワールは、写真にあらがわず、その特徴を巧みに採り入れることで、場の空気や光をリアルに表現することへのシフトを図ったというのだ”

その新聞記事の最後は、こんな風に締めくくってありました。

”会場では、この絵はくしくも印象派のスター、ルノワールの絵の隣に掛けられている。明るく楽しげなルノワールの横にあるロワールの静かに切り取った「夜明けのパリ」それが、あなたに見つけ出されるのを待っている”

 私は見つけ出せたと思います!


  フィンセント・ファン・ゴッホ 医師レーの肖像 1889年     ポール・セザンヌ パイプをくわえた男 1893-96年頃
   フィンセント・ファン・ゴッホ 医師レーの肖像 1889年       ポール・セザンヌ パイプをくわえた男 1893-96年頃


「医師レーの肖像」:
アルルでゴーギャンと共同生活をしていたゴッホは、いさかいがもとで自身の耳を切り、神経症の発作を起こして入院します。ゴッホは、そこで診療にあたった見習い医師フェリックス・レーの肖像画を描きました。けれども、この絵は医師には気に入られず、すぐに売却され、それがシチューキンの眼にとまり、ロシアへ渡ったそうです。医師は、売らなきゃ今頃大金持ちになれたのに……って、そういうお話ではないか。

「パイプをくわえた男」:
故郷エクス=アン=プロヴァンスの庭師をモデルに描いた「パイプをくわえた男」の連作のひとつ。後ろに、見えるのは手元だけですが、セザンヌ夫人の肖像画が掛けられています。左への傾きを強調した不安定な構図や、立体をあらゆる方向から平面的に捉える試みは、のちのキュビスムの誕生を予感させます。シチューキンがパリの画廊から購入した作品です。


第4章 20世紀 フォーヴィスム、キュヴィスム、エコール・ド・パリ



フォーヴィスムは、野獣派とも呼ばれ、感覚を重視し、目に映る色彩ではなく、心が感じる色彩を表現した。世紀末芸術に見られる陰鬱な暗い作風とは対照的に、明るい強烈な色彩でのびのびとした雰囲気を創造した。

キュビスムはパブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックによって創始され、それまでの具象絵画が一つの視点に基づいて描かれていたのに対し、いろいろな角度から見た物の形を一つの画面に収め、ルネサンス以来の一点透視図法を否定した。

エコール・ド・パリは、「パリ派」の意味で、20世紀前半、各地からパリのモンマルトルやモンパルナスに集まり、ボヘミアン的な生活をしていた画家たちを指す。厳密な定義ではないが、1920年代を中心にパリで活動し、出身国も画風もさまざまな画家たちの総称。


           アンリ・マティスの《カラー、アイリス、ミモザ》 1913年 
           アンリ・マティス 《カラー、アイリス、ミモザ》 1913年

今回の展覧会のテーマは『人物表現』ですが、人物が描かれていない静物画はマティスの作品のみだそうです。この作品はマティスが1912〜1913年、モロッコを旅行した際に描いたカラーという花をモチーフとした2作品のうちの1作。対になるもう1点《花束(カラー)》は、エルミタージュ美術館に所蔵されています。


パブロ・ピカソ マジョルカ島の女 1905年 241900.jpg
パブロ・ピカソ マジョルカ島の女 1905年       パブロ・ピカソ 逢引(抱擁) 1900年頃

この2点は、ピカソの初期の「青の時代」から「バラ色の時代」へ移りかわるころの作品です。「マジョルカ島の女」には、青への強い思い入れが見てとれ、淡い青色で薄く塗られた背景や物憂げな女性の表情は、作品に深い情感を与えています。「逢引」は、一見しただけでも、絵の中の男女の情熱が伝わってくるようです。


              アンリー・ルソー 詩人に霊感を与えるミューズ 1909年
              アンリー・ルソー 詩人に霊感を与えるミューズ 1909年

詩人兼小説家ギヨーム・アポリネールと、その恋人ローランサンの肖像画。本作を描く際、ルソーはモデルであるアポリネールやローランサンの鼻、口、耳、額、身体など全身を巻尺で正確に採寸し、それら測定値を元に画面の寸法(大きさ)を決めたとされています。画面中央では、太陽神アポロンに付き従う諸芸術を司る9人の女神ミューズ(ムーサ)の中から、喜びや叙事詩を司るとされているエウテルペ(又は恋愛詩を司るエラート)に扮したローランサンが、詩人(本作ではアポリネール)に霊感を与えています。


           シャガール ノクターン
            マルク・シャガール ノクターン 1947年

赤く燃え盛るのは、故郷ベラルーシの町、赤い馬に乗る花嫁は愛妻べラです。妻の死、ナチスによる故郷の破壊。故郷を離れ、アメリカへ亡命、後にフランスに永住した「愛の画家」と呼ばれるシャガールのこの絵に、魅かれる人は多いことでしょう。


Leger_1951_The-Builders_PLZ-171.jpg                  
                   フェルナン・レジェ 建設労働者たち 1951年

この絵が、最後の展示物で、縦3メートル、横2メートルという大きな絵でした。

レジェは第二次大戦の戦後復興の際に、機械の技術進歩が明日を幸せにするという考えからこの絵を描き、人間は人間として機械は機械として描くことで、リアルに20世紀の機械文明における人と機械のかかわり方についてを描いたのだそうです。子供たちに20世紀を代表する画家たちの作品を数点、見せたところ、レジェの作品が1番人気があったとか。このカラフルな色使いに、子供を引き付ける不思議な魅力があるのかもしれません。


横浜美術館でのプーシキン美術館展は、9/16まで開催されています。

また、ブログの中でも触れた、横浜美術館学芸員の松永真太郎さんのインタビュー記事がとても面白かったので、リンクを張らせていただきました。今回のプーシキン美術館展の解説の他、展示物の運送の苦労などの記事が掲載されています。


*日本初公開の作品も多数!あの画家の、あの名画に、会いに行こう。横浜美術館「プーシキン美術館展」横浜美術館学芸員の松永真太郎さんに聞く。

〈第1回〉「プーシキン美術館」ってどんなところ?」

〈第2回〉名画はどうやって運ばれてきたの?

〈第3回〉ここはかならずCHECKすべし!プーシキン美術館展

コメント

No title

お盆以降はパソコンに向き合う時間がなく、久々に拝見しました。
充実したブログですね。
勉強になります。
見習わねば。

Re: No title

自分の覚書で、好きに書いてるブログですから、勉強してもらったり、見習ってもらうようなものではありませんよ。……で、その上で訪問してくれた人に面白いと思ってもらえたら嬉しいなって感じです。
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kazanasi

Author:kazanasi
絵画、小説を中心に観たり読んだり、自作で作ったり。サブカル全般に興味があります。暖かい時期には山登りもします。アナログとデジタルの間を行ったり来たりしてる人間です。


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