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プーシキン美術館展に行ってきました


9/4(水)に横浜美術館で催されている「プーシキン美術館展」に行ってきました。


プーシキン美術館は、ロシアの首都モスクワの中心地に位置し、エルミタージュ美術館とならんで、世界的な西洋絵画コレクションを誇る国立美術館です。なかでも、エカテリーナ2世らロマノフ王朝の歴代皇帝や貴族、19世紀の産業発展で財をなしたモスクワの大富豪たちが収集した印象派からマティス、ピカソまで、屈指の名品を揃えたフランス近代絵画のコレクションは極めて高い水準を誇ります。

今回のプーシキン美術館展は、そのコレクションの中から17世紀の古典主義、ロココから19世紀後半の印象主義、ポスト印象主義の計66点を集めた展覧会です。

横浜美術館を訪れたのは、朝一の10:00でしたが、すでに美術館前には、観覧者の長い列が! 会期が9/16までとあって、やはり込み合っていました。それでも、鑑賞するのに困るほどではありませんでした。


では、その中から印象に残った数点を紹介してゆきましょう。

第1章 17・18世紀 古典主義、ロココ

入口を入って、間もないうちに目に飛び込んでくるのがこの絵です。

ニコラ・プッサン アモリびとを打ち破るヨシュア 1624-25年頃
ニコラ・プッサン アモリびとを打ち破るヨシュア 1624-25年頃

プッサンは17世紀フランス古典主義を代表する画家。この絵は、『旧約聖書』のなかで、モーセの後継者ヨシュア(画面左下)が「約束の地」カナンを征服する場面。ヨシュアは、征服の際に住民たちを皆殺しにしたとか


ジャン・パテスト・サンテール 蝋燭の前の少女1700年頃
ジャン・パテスト・サンテール 蝋燭の前の少女1700年頃

 サンテールは、ロココ美術萌芽期において特に評価された画家。蝋燭の淡い灯りに照らされた少女の優しい表が印象的でした。蝋燭というと、この展覧会には絵は出ていませんでしたが、古典主義のラトゥールを思い出しますが、サンテールの絵の方が温かな感じがしますね。

(参考)ラトゥール「悔悛するマグダラのマリア」 
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               フランソワ・ブーシェ ユピテルとカリスト 1744年
               フランソワ・ブーシェ  ユピテルとカリスト 1744年

18世紀ロココ芸術を代表するブーシェの作品。色彩が鮮やかですね。

女神ディアナの従者カリストを我がものにしようと、ディアナに扮して近づくユピテル。どんなに上手く女装しても、後ろに描かれた鷲の姿でユピテルだとバレてしまいます。
ユピテルを描いた神話画は沢山ありますが、ある時には”牡牛”、また、ある時には”金の雨”だったり、この「ユピテルとカリスト」では、”女装”と、欲望を満たすためのユピテルの変身には、驚かされてしまいます。さすがは全能の神!

         マルグリット・ジェラール 猫の勝利 1785年 
         マルグリット・ジェラール 猫の勝利 1785年

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       ユベール・ロベール ピラミッドと神殿 1780年頃


「猫の勝利」の作者、ジェラールは、ロココ時代の代表的な画家、フラゴナールの妻の妹で、フラゴナールに学んだ画家。いかにも、ロココ時代らしい、宮廷のサロン風の優美で可愛いらしい画風。

「ピラミッドと神殿」は、”廃墟のロベール”とも呼ばれ、廃墟画でも有名なロベールの作品。ギリシャの神殿風な建造物と、エジプトのピラミッド。同時には存在しない物を同一画面に描くことで、不思議な雰囲気を醸し出しています。廃墟画にしても、このような空想的建造物にしても、その中にロベールは、必ず一般人の姿を描きこんだそうです。鑑賞者を絵の世界に誘う効果を狙ってのことでしょうか。


第2章 19世紀前半 ロマン主義、新古典主義、自然主義


ロマン主義とは、優美なロココや教義的な神話をテーマとして扱った古典主義とは違をなし、抑圧されてきた個人の感情、「憂鬱」・「不安」・「動揺」・「苦悩」・「個人的な愛情」に移行していった画風。

また、新古典主義は、ロマン主義とはまっこう対立し、デッサンと形を重視し、理性を通じた普遍的価値の表現を理想とした。

自然主義では、理想化・空想化・美化しない、現実的描写。題材はミレーにみられるような農村の生活など、庶民を描いたものも好まれた。



              ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル 聖杯の前の聖母 1841年
            ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル 聖杯の前の聖母 1841年

新古典主義の巨匠アングルによる、聖母像の傑作のひとつ。アングルの描く女性の顔って本当に気品があって素敵ですね。マリアの後ろには、時の皇帝ニコライ1世とアレクサンドル皇太子をたたえるべく、2人と同名の聖人が描かれています。

ジャン・レオン・ジェローム カンタウレス王
             ジャン・レオン・ジェローム カンタウレス王 1859-60頃

伝説によれば、カンタウレス王は、自分の妻ニュッシア(別伝によればルド)の美しさを自慢するあまり、友人のギュゲスに妻の裸体を見させた。怒った妻はギュゲスに対し、自殺するか王を殺して王位と自分とを我が物とするかを迫ったという。
そのシーンをジェロームは、お得意の美しい女性裸体の後姿を用いて描いています。


      ドラロッシュ エドワード4世の息子たち

叔父により、ロンドン塔に幽閉された二人の兄弟の不安な表情が、哀しいですね。           
つい最近の2013年4月7日に、長年、行方が謎になっていたこの二人の遺骨が、実際にロンドン塔で見つかりました。

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            トマ・クチュール 仮面舞踏会後の夜食会 1855年頃 

 宴会後のけだるそうな雰囲気がよく出ていますね。見ているうちに、思わず笑みがこぼれてしまうような一枚です。 
   

第3章 19世紀後半 印象主義、ポスト印象主義 


印象主義の作品には、写実主義などの細かいタッチと異なり、光の動き、変化の質感をいかに絵画で表現するかに重きを置き、絵画中に明確な線が見られないことも大きな特徴である。また、それまでの画家たちが主にアトリエの中で絵を描いていたのとは対照的に、好んで屋外に出かけて絵を描いた。


クロード・モネ 陽だまりのライラック 1872-73年
   クロード・モネ 陽だまりのライラック 1872-73年

パリ郊外の町アルジャントゥイユの、モネが暮らした家での情景だと思われます。淡いピンクの色のライラックと木漏れ日の様子が、印象主義特有のタッチで描かれ、まるで空気までが揺れているよう。この絵は、特に好きな1枚でした。


           ピエール=オーギュスト・ルノワール ジャンヌ・サマリーの肖像 1877年
          ピエール=オーギュスト・ルノワール ジャンヌ・サマリーの肖像 1877年


「プーシキン美術館展」の宣伝で、イメージモデル? にもなっているジャンヌ・サマリーは、コメディ=フランセーズの花形女優で、1870年代後半のルノワールのお気に入りのモデルでした。当時の肖像画には珍しい暖色系のピンクの背景で、ルノワールの印象派時代最高の肖像画とも評されます。20歳になったばかりの蕩けそうなジャンヌの表情が魅力的です。

この絵の前には、さすがに人だかりができていました。あるTV番組で、ジャンヌの洋服の青が、斜めから正面に移動しながら観てみると、正面に行った時にふわりと浮き上がるように思えるって言ってました。確かに、そんな感じもしました。柔らかなタッチの光の表現が、ちょっとした魔法を使うのかも。


     ルイジ・ロワール 夜明けのパリ
     ルイジ・ロワール 夜明けのパリ 1880年後半ー1890年前半

ロワールは、ほとんど日本でも名前の知られていない画家の一人ですが、このプーシキン美術館展でじわじわと人気があがってきた絵で、横浜美術館の担当学芸員の松永さんのイチオシの絵でもあるそうです。
私はたまたま、横浜美術館を訪れた日の前日の朝日新聞の記事で、このことを知ったのですが、その記事の概要はこんな感じ。

 ”ルイジ・ロワールの「夜明けのパリ」は、百数十年前のパリの街角から、早朝の肌寒さや雨あがりの潤った空気が伝わってくるような逸品だ。だが、その画家は「新潮世界美術辞典」にも名前が載っていない。それが、今、見た者の心をつかみ、じわじわとファンを増やしている。横浜美術館の学芸員の永松さんは、その美しさの裏には、印象派の技法とともに、写真の影響をみる。ロワールは、写真にあらがわず、その特徴を巧みに採り入れることで、場の空気や光をリアルに表現することへのシフトを図ったというのだ”

その新聞記事の最後は、こんな風に締めくくってありました。

”会場では、この絵はくしくも印象派のスター、ルノワールの絵の隣に掛けられている。明るく楽しげなルノワールの横にあるロワールの静かに切り取った「夜明けのパリ」それが、あなたに見つけ出されるのを待っている”

 私は見つけ出せたと思います!


  フィンセント・ファン・ゴッホ 医師レーの肖像 1889年     ポール・セザンヌ パイプをくわえた男 1893-96年頃
   フィンセント・ファン・ゴッホ 医師レーの肖像 1889年       ポール・セザンヌ パイプをくわえた男 1893-96年頃


「医師レーの肖像」:
アルルでゴーギャンと共同生活をしていたゴッホは、いさかいがもとで自身の耳を切り、神経症の発作を起こして入院します。ゴッホは、そこで診療にあたった見習い医師フェリックス・レーの肖像画を描きました。けれども、この絵は医師には気に入られず、すぐに売却され、それがシチューキンの眼にとまり、ロシアへ渡ったそうです。医師は、売らなきゃ今頃大金持ちになれたのに……って、そういうお話ではないか。

「パイプをくわえた男」:
故郷エクス=アン=プロヴァンスの庭師をモデルに描いた「パイプをくわえた男」の連作のひとつ。後ろに、見えるのは手元だけですが、セザンヌ夫人の肖像画が掛けられています。左への傾きを強調した不安定な構図や、立体をあらゆる方向から平面的に捉える試みは、のちのキュビスムの誕生を予感させます。シチューキンがパリの画廊から購入した作品です。


第4章 20世紀 フォーヴィスム、キュヴィスム、エコール・ド・パリ



フォーヴィスムは、野獣派とも呼ばれ、感覚を重視し、目に映る色彩ではなく、心が感じる色彩を表現した。世紀末芸術に見られる陰鬱な暗い作風とは対照的に、明るい強烈な色彩でのびのびとした雰囲気を創造した。

キュビスムはパブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックによって創始され、それまでの具象絵画が一つの視点に基づいて描かれていたのに対し、いろいろな角度から見た物の形を一つの画面に収め、ルネサンス以来の一点透視図法を否定した。

エコール・ド・パリは、「パリ派」の意味で、20世紀前半、各地からパリのモンマルトルやモンパルナスに集まり、ボヘミアン的な生活をしていた画家たちを指す。厳密な定義ではないが、1920年代を中心にパリで活動し、出身国も画風もさまざまな画家たちの総称。


           アンリ・マティスの《カラー、アイリス、ミモザ》 1913年 
           アンリ・マティス 《カラー、アイリス、ミモザ》 1913年

今回の展覧会のテーマは『人物表現』ですが、人物が描かれていない静物画はマティスの作品のみだそうです。この作品はマティスが1912〜1913年、モロッコを旅行した際に描いたカラーという花をモチーフとした2作品のうちの1作。対になるもう1点《花束(カラー)》は、エルミタージュ美術館に所蔵されています。


パブロ・ピカソ マジョルカ島の女 1905年 241900.jpg
パブロ・ピカソ マジョルカ島の女 1905年       パブロ・ピカソ 逢引(抱擁) 1900年頃

この2点は、ピカソの初期の「青の時代」から「バラ色の時代」へ移りかわるころの作品です。「マジョルカ島の女」には、青への強い思い入れが見てとれ、淡い青色で薄く塗られた背景や物憂げな女性の表情は、作品に深い情感を与えています。「逢引」は、一見しただけでも、絵の中の男女の情熱が伝わってくるようです。


              アンリー・ルソー 詩人に霊感を与えるミューズ 1909年
              アンリー・ルソー 詩人に霊感を与えるミューズ 1909年

詩人兼小説家ギヨーム・アポリネールと、その恋人ローランサンの肖像画。本作を描く際、ルソーはモデルであるアポリネールやローランサンの鼻、口、耳、額、身体など全身を巻尺で正確に採寸し、それら測定値を元に画面の寸法(大きさ)を決めたとされています。画面中央では、太陽神アポロンに付き従う諸芸術を司る9人の女神ミューズ(ムーサ)の中から、喜びや叙事詩を司るとされているエウテルペ(又は恋愛詩を司るエラート)に扮したローランサンが、詩人(本作ではアポリネール)に霊感を与えています。


           シャガール ノクターン
            マルク・シャガール ノクターン 1947年

赤く燃え盛るのは、故郷ベラルーシの町、赤い馬に乗る花嫁は愛妻べラです。妻の死、ナチスによる故郷の破壊。故郷を離れ、アメリカへ亡命、後にフランスに永住した「愛の画家」と呼ばれるシャガールのこの絵に、魅かれる人は多いことでしょう。


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                   フェルナン・レジェ 建設労働者たち 1951年

この絵が、最後の展示物で、縦3メートル、横2メートルという大きな絵でした。

レジェは第二次大戦の戦後復興の際に、機械の技術進歩が明日を幸せにするという考えからこの絵を描き、人間は人間として機械は機械として描くことで、リアルに20世紀の機械文明における人と機械のかかわり方についてを描いたのだそうです。子供たちに20世紀を代表する画家たちの作品を数点、見せたところ、レジェの作品が1番人気があったとか。このカラフルな色使いに、子供を引き付ける不思議な魅力があるのかもしれません。


横浜美術館でのプーシキン美術館展は、9/16まで開催されています。

また、ブログの中でも触れた、横浜美術館学芸員の松永真太郎さんのインタビュー記事がとても面白かったので、リンクを張らせていただきました。今回のプーシキン美術館展の解説の他、展示物の運送の苦労などの記事が掲載されています。


*日本初公開の作品も多数!あの画家の、あの名画に、会いに行こう。横浜美術館「プーシキン美術館展」横浜美術館学芸員の松永真太郎さんに聞く。

〈第1回〉「プーシキン美術館」ってどんなところ?」

〈第2回〉名画はどうやって運ばれてきたの?

〈第3回〉ここはかならずCHECKすべし!プーシキン美術館展
     

弥生美術館・竹久夢二美術館


 6/29(土)に東大、弥生門近くにある(ちなみに東大には門が9つあります)弥生美術館・竹久夢二美術館へ行ってきました。
 弥生美術館は、高畠華宵を始めとする明治、大正、昭和を彩る挿絵画家の作品と当時の美術作品を展示。竹久夢二美術館は、画家、詩人など多彩な才能を発揮した竹久夢二の〈夢二式美人画〉から、モダンな表現を試みたデザイン作品まで幅広い展示がなされている都内では唯一、夢二作品を観覧できる美術館だそうです。
 入口は、こじんまりしたいい感じの作りです。入口の横には夢二の作品のレリーフがありました。

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ちなみにこの2館は併設されていて、1枚のチケットで見れるのが魅力です。私は、面白くて、2館を結ぶ渡り廊下を行ったり来たりしてしまいました。


弥生・竹久夢二美術館の見取り図。行ったり来たり。
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 6/30で終了してしまったのですが、この日、私が見た企画は、

「魔性の女」挿絵(イラストレーション)展
  -大正~昭和初期の文学に登場した
                妖艶な悪女たち-


と題した、いわゆる西洋画の”ファムファンタル”=”魔性の女”をテーマとした作品を集めた展覧会で、怖く妖艶、そして美しい作品の勢ぞろいで、なかなか見応えがありました。

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特に興味を引いた画家と作品をいくつか紹介すると、

橘小夢(たちばな さゆめ):
1892-1970 大正-昭和時代前期の挿絵画家。
明治25年10月12日生まれ。洋画を黒田清輝(せいき),日本画を川端玉章にまなぶ。雑誌や小説の挿絵を中心に,版画,日本画を手がける。民話,伝説をモチーフに女性の魔性を表現,たびたび発行禁止処分をうけ,「幻の画家」とよばれた。

 玉藻の前                 刺青 谷崎潤一郎の小説がモチーフ  水魔
ph_1304_1.jpg ph_1304_2.jpg 橘小夢/画「水魔」

                   嫉妬
                 橘 小夢, “嫉妬

とくに上の「嫉妬」は、”本妻と側室が一見仲良さそうにゲームを楽しんでいるが、心の奥底には激しい嫉妬の情が渦巻いている”という解説があり、二人の女のどろどろした感情がこちらにも伝わってくるようで、本当に怖かったです。でも、この絵の線の描画の美しいこと! 本当に妖艶な魅力がありました。


高畠 華宵(たかばたけ かしょう):
1888- 1966 大正ー昭和初期の挿絵画家。ピアズリ―などの影響を強く受け、『少女画報』『少女倶楽部』『少年倶楽部』(いずれも講談社)『日本少年』『婦人世界』(いずれも実業之日本社)などの少女向け雑誌や少年雑誌、婦人雑誌などに挿絵として描いた独特の美少年・美少女の絵や美人画は一世を風靡し、たちまち竹久夢二らと並ぶスター画家となった。

弥生美術館は、創始者、鹿野琢見が9歳の時に華宵の絵を見て感銘を受け、その時の感動を綴った手紙を華宵に送ったことを切っ掛けに二人が親睦を深め、鹿野が華宵の死後に著作権を得たことを受けて創設した館でもあるそうで、華宵の作品を多く所蔵しています。
         
       人魚
 この「人魚」という作品は、西洋の絵本の挿絵のようで、私は1番好きな作品でした。この華麗な背中の反り具合と水にたゆとう髪。
 この絵の人魚は、可憐な感じがして悪女というイメージではありません。けれども、ローレライやセイレーンといった伝説では、人魚はその美しい歌声で船人を海に引きずり込むのですから、やっぱり悪女なのでしょうね。


薔薇の夢                             情炎        
高畠華宵 《薔薇の夢》 img_646024_24546620_0.jpg

この他にも、泉鏡花「高野聖」の女、谷崎潤一郎「痴人の愛」のナオミ、江戸川乱歩「黒蜥蜴」(くろとかげ)の緑川夫人など、沢山の官能的で怖いけれど、魅力的な女性たちの挿絵が展示されていて、鑑賞者たちを甘美な毒気に酔わせるようでした。

   黒蜥蜴のポスター                        伊藤彦造画 砂絵呪縛  
  kurotokage.jpg    「砂絵呪縛(すなえしばり)」伊藤彦造


                  水島爾保布画 人魚の嘆き

                 「人魚の嘆き」水島爾保布/画 


 さて、弥生美術館を経て、渡り廊下の向こうの竹久夢二美術館では、

 竹久夢二 美人画とモデル展
    ―描かれた女性の謎と
            ロマンスに迫る―


 を開催していました。ここでは、夢二が描き残した美人画の制作に当たって大きな影響を与えた、三人の女性、岸たまき・笠井彦乃・佐々木カ子ヨ(お葉)をクローズアップして、彼女らを描いた絵ともに、夢二の恋愛模様や理想とした女性像についての紹介がされていました。


まず、竹久夢二のプロフィールはこんな感じです。

竹久 夢二(たけひさ ゆめじ):
(1884 - 1934)は大正浪漫を代表する画家で日本の画家・詩人。本名は竹久 茂次郎(たけひさ もじろう)。

 数多くの美人画を残しており、その抒情的な作品は「夢二式美人」と呼ばれ、「大正の浮世絵師」などと呼ばれたこともある。また、児童雑誌や詩文の挿絵も描いた。文筆の分野でも、詩、歌謡、童話など創作しており、なかでも、詩『宵待草』には曲が付けられて大衆歌として受け、全国的な愛唱曲となった。また、多くの書籍の装幀、広告宣伝物、日用雑貨のほか、浴衣などのデザインも手がけており、日本の近代グラフィック・デザインの草分けのひとりともいえる。

岸他万喜(きし たまき):
1882ー1945
夢二の生涯のうちで唯一戸籍に入った女性。〈夢二式美人画〉は「大いなる眼の殊に美しき人」といわれた「たまき」をモデルにして生まれた。
 夢二が彦乃を知った後に、たまきと画学生東郷鉄春(青児)との仲を疑い、富山県の海岸で夢二がたまきの腕を刺すことによって破局を迎え離婚。だが、その後数年間にわたって同居と別居をくり返す。また、たまきは結核療養中の夢二を信州まで見舞い、夢二亡き後も終生彼を慕い続けたという。気が強く、後には、夢二デザインの小間物をあつかう「港屋絵草紙店」の女店主となる。

         
        岸たまき                岸 絵
        岸たまき                         たまきの横顔 感じが出てますね。



笠井 彦乃(かさい ひこの):
1896-1920
日本橋の紙問屋の娘として裕福に育ち、女子美術学校の学生であった。夢二のファンであり、絵を習いたいと「港屋絵草子店」を訪問し、交際が始まる。
たまきと別れ京都に移り住んだ夢二としばらく同棲するが、九州旅行中の夢二を追う途中、別府温泉で結核を発病。父の手によって東京に連れ戻され、夢二は本郷菊富士ホテルに移るが、面会を遮断される。御茶ノ水順天堂医院に入院した彦乃は、わずか25歳で短い人生を終える。
夢二は、その死後しばらくショックから立ち直れなかった。「彦乃日記」をのこす。
 夢二の『秘薬紫雪』は夢二と彦乃がモデルであり、まさに美人薄命で、夢二の心に永遠に残る人。

                                      笠井彦乃
                                     笠井彦乃
              夏姿 彦乃
               夏姿  何か可愛い!

お葉:1904-1980

戸籍名は佐々木カ子ヨ(かねよ)「お葉」は夢二による愛称。
上京後、東京美術学校のモデルとして人気があった。藤島武二、伊藤晴雨らのモデルをつとめた後に、菊富士ホテルに逗留していた夢二のモデルとして通ううちに同棲、渋谷(現在の渋谷ビーム、同地に石碑あり)に所帯をもつ。1924年、夢二が設計した世田谷「少年山荘」に一緒に移り住んだ。一児をもうけるが夭折。翌14年に、彦乃のことを忘れなれない夢二を嘆き、お葉は自殺を図り、半年後に別離する。後、医師と結婚し主婦として穏やかな生涯を過ごした。
有名な夢二作品、『黒船屋』はお葉をモデルとした。


                                      お葉
                                     お葉
                 お葉 絵
                 黒船屋  この”夢二美人”を代表する絵は、お葉がモデル


 こうして挙げてみても、タイプも性格も三者三様でとても興味深いですね。共通点はみんな美人!

        artist_ph.jpg              Yumeji_Takehisa.jpg
 
 しかし、上の左の写真! 若かり頃の夢二ですが、窓辺に座り、美人画の構図でも考えているのでしょうか。このナルシストっぽさったら!(笑) 夢二自身も、彼の絵になりそうな美青年だったんですね。ちなみに右の写真は少し後の夢二。いつも、憂鬱そうなポーズをとっていますね。


 その他の作品のうちの何点かを紹介します。モダンなタッチの絵もあって、夢二ワールドは素敵でした。

雪の風
  冬の風

エイプリルフール
  エイプリルフール

   初春      「水竹居」
    初春                               水竹居



「宵待草」原詩 

 遣る瀬ない釣り鐘草の夕の歌が あれあれ風に吹かれて来る
 待てど暮らせど来ぬ人を 宵待草の心もとなき
 想ふまいとは思へども 我としもなきため涙 今宵は月も出ぬさうな 


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■所在地:弥生美術館 〒113-0032 東京都文京区弥生2-4-3 TEL 03(3812)0012
       竹久夢二美術館 〒113-0032 東京都文京区弥生2-4-2 TEL 03(5689)0462

■開館時間:午前10時~午後5時(入館は4時30分まで)
■休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)、展示替え期間中、年末年始
■入館料:一般900円/大・高生800円/中・小生400円

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・地下鉄千代田線「根津駅」1番出口より徒歩7分
・地下鉄南北線「東大前駅」1番出口より徒歩7分
・JR「上野駅」公園口より徒歩25分
     

~池田浩彰と少年少女名作文学の挿絵画家たち


 私が、池田浩彰の絵を最初に見たのは、子供の頃に父が買ってきてくれた「少年少女世界の名作文学」という全50巻の児童向けの本の挿絵でした。
 その本には、他にも伊藤彦造や、玉井徳太郎、山中冬児、久里洋二、伊勢谷邦彦、蕗谷虹児、……今を思えば錚々たるメンバーの挿絵が掲載されていたのです。監修が川端康成というだけに、内容的にも世界の名作のほとんどを網羅していたと思いますし、一つ一つの作品の雰囲気とぴったりで、素晴らしく綺麗な挿絵が沢山入っていて、それを見るたびにどきどきわくわくしたものです。
 ここに載せたのは、その中のごくわずかの挿絵です。これだけでも、ため息ものの充実度です。

        伊藤彦造「平家物語」
        平家物語


 玉井徳太郎「若草物語」
若草 玉   若草

                      若草4


    山中冬児「バンビ」                     山中冬児「ガリバー旅行記」
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   山中冬児 ガリバー旅行記                    
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    久里洋二「点子ちゃんとアントン」
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  伊勢谷邦彦「怪傑ゾロ」
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            蕗谷虹児「聊斎志異」
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            虹児


 ちょっと前置きが盛り上がってしまいましたが池田浩彰さんに話を戻すと、このAFTENOONTEAのブログで、前に少し、池田さんの絵に触れたところ、結構な頻度で「池田浩彰」でキーワード検索、アクセスしてくる訪問者が多い事に気づきました。やっぱり人気があるんだなぁと、けっこう嬉しくなってしまったので、情報が少ないながらも、自分なりに”池田浩彰”特集を組んでしまおうかなと!

ところが、池田浩彰さんの情報はとても少ないのです。もう亡くなられたということですが、ネットや本で調べたプロフィールは、

池田浩彰
 1925年、 大連(現在の中国の旅大市大連)に生まれる。独学で絵の道にはいる。
 ロシア占領下時代の建築物が並ぶヨーロッパをおもわせる街、大連で培われた美意識と、日本的なるものへの憧れ、東洋と西洋が結合したような永遠のボヘミアンを理想とする生き方の中で、ロマンチズムに満ちた画風が生まれた。



 解説には、昭和30年頃から多くの児童書や文学書の挿絵を描いたともあります。少年少女名作文学にもソビエト編に多くの挿絵を描いておられるのを見ると、プロフィールにロシア占領下時代を生き抜いてきたとあるのが頷けるような気がします。池田浩彰というと、お姫さまっぽい絵を想い浮かべてしまいますが、こんな骨太な挿絵もあるのです。

            ソビエト編4「若き親衛隊」  躍動感が凄いです! こちらに向かって馬が駆けてきそう。

            若き親衛隊2


若き親衛隊     若き親衛隊1



   こちらはソビエト編5の「ビーチャの学校生活」の挿絵です。こちらは児童書っぽい挿絵で可愛いですね。

   ビーチャの学校生活2     ビーチャの学校生活


             ビーチャの学校生活3



             日本編1「古事記」 
             天の岩戸に篭ってしまった天照大神を外に出すために踊る天宇受賣命(アメノウズメ)
             神楽の音が聞こえてきそうな感じがします。

           古事記1

古事記2   古事記


 もちろん、池田浩彰の真骨頂といえば、お姫様! 少年少女文学全集の他の挿絵には、こんな素敵な物が沢山あります。

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                「白鳥の王子」
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     「シンデレラ」
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        「人魚姫」
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池田浩彰さんの挿絵を少しだけ紹介しましたが、また、本棚の奥にしまってある分も追々載せてゆきたいと思います。
尚、下の国会図書館の検索サーチで、彼の挿絵のある本のサーチができます。参考まで。

国会図書館サーチ 池田浩彰
     

国立西洋美術館 常設展


ラファエロ展、ダ・ヴィンチ展、ルーベンス等など、各美術館では色とりどりの企画展が次々に催されていますが、常設展示にも素晴らしい絵が沢山あるのを最近知りました。
 例えば東京、上野にある国立西洋美術館の常設展は観覧料が420円と信じられないほどの安さにもかかわらず、あの画家のあの名画が! と驚くほどの充実度です。
 特に、その展示物の大半を占めている松方コレクションは凄いです。

松方コレクションとは

㈱川崎造船所の社長であった故松方幸次郎が、第一次大戦末期から1920年代初頭に欧州各地で集めたもののうち、第二次大戦後にフランスから寄贈返還されたコレクション。

多くの作品が散逸してしまいましたが、国立西洋美術館に収蔵されているのは、その中の西洋美術のコレクションのうち、近代フランスの絵画・彫刻等約370点で、特にモネの絵画、ロダンの彫刻彫刻がまとまって収集されています。
松方本人は自分のコレクションについてのまとまった著作を残していないので、「幻のコレクション」とも呼ばれてきたそうですが、研究者の努力により近年では、コレクションの全容が解明されつつあるそうです。


 私が訪れたのは6/7(金)の午後5時すぎだったので、観覧者も少なく、本当にじっくりと1枚の絵を見ることができました。この時間帯の観覧者は100%が一人で来ている人たちでした。

常設展への入り口はフリーゾーン(無料)で、ロダンの「考える人」(拡大版)や「地獄の門」などの彫刻が設置されています。

この「地獄の門」は、ダンテの「神曲」をテーマにして制作された、オーギュスト・ロダンの未完の作品で、「考える人」はこの門を構成する群像の一つです。このロダン作「地獄の門」は、国立西洋美術館、静岡県立美術館をはじめ、世界に7つが展示されているそうです。
「地獄の門」の前に立った時の何ともいえぬ重厚感! 夕暮れの時間に見たので余計に雰囲気がありました。
 

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 フリーゾーンから館内に入ると、展示エリアは、4つのエリアに分けられて展示されています。

その主な作品です。

*彫刻エリア:

19世紀から20世紀にかけての他の有名な彫刻作品や、特にロダンの代表作のほとんどが網羅されて展示されています。
「考える人」「バルザック」「地獄の門」など

*18世紀末までのオールドマスター(西洋の中世後期から18世紀末までに活躍した作家)の絵画エリア


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                 ヨース・ファン・クレーフェ [1485年頃 - 1540/41年]

*この三連祭壇画はクレーフェ後期の作品と推定される。中央部に「キリスト傑刑」が表わされ、左右の翼部にはこの祭壇画の寄進者夫妻の跪く姿が描かれている。この三連形式は初期キリスト教美術から発生し、中世以降は祭壇画の標準フォーマットとなった。

                       ヘーラルト・ダウ シャボン玉を吹く少年と静物 1635-36頃 

                ヘーラルト・ダウ シャボン玉を吹く少年と静物 1635-36頃

*画面に描かれたシャボン玉、髑髏、砂時計、羽飾り付きの帽子、瓢箪などから、この作品は、メメント・モリ”死を記憶せよ”をテーマとする、いわゆる「ヴァニタス」画、すなわち、静物の描写を通して人生の虚しさや儚さ、あるいは移ろいやすさを表現するものであることが知られる。
”ヴァニタス”の意味は空虚で、芸術で、以前の静物画には何かしら死を意味するモチーフを入れるべきだと考えられていたと思われる。
ただし、通常の「ヴァニタス」画とはやや異なって、シャボン玉を吹く少年は翼を具えた天使として描かれており、ここには何らかの宗教的意味合いも重ねられているように思われる。

 私は、ヴァニタス画ってけっこう好きなんですが、少年の視線の追う先には何が映っているんでしょうね。気になるところです。

【超余談】 以前に観たヴァニタス画は、人体図で、理科室にある人体模型のような人物画が官能的なポーズをとっていて、その背景には繊細な風景画が描かれてました。昔の人は、人体図も風景画として見ていたのかな。今と昔の感性の違いを感じてしまったけれど、けっこう心魅かれてしまいました(笑)      

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こういう絵です。16世紀のアンドレアス・ヴェサリウスという解剖学者で医師が書いたものです。背景の村は、この医師の故郷だたとか。細密描写が秀逸ですね。これは国立西洋美術館の所蔵じゃないのですが。


ちょっと、横道にそれてしまいました。本題に戻ります。次は展示作品の中でも絵葉書の売行きが2位の人気作だとか。

                   カルロ・ドルチ 悲しみの聖母 1655頃

                         カルロ・ドルチ 悲しみの聖母 1655頃

これは、ドルチ、39歳の時の作品で、淡い光背に包まれ、フェルメールブルーとしても有名な青。ウルトラマリンブルーと言われる”ラピスラズリ”で衣服を描いた絵。聖母マリアの美しくも悲痛な表情は、観者の心に深い感銘をあたえます。そして、本当にこの青は素敵な色ですね。

【他作品】

アブラハムとイサクのいる森林風景 ヤン・ブリューゲル 1599
   アブラハムとイサクのいる森林風景 ヤン・ブリューゲル 1599       フュースリ グイド・カヴァルカンティの亡霊に出会うデオドーレ 1783年ごろ
                                       フュースリ 1783年頃
                                      グイド・カヴァルカンティの亡霊に出会うデオドーレ 


                 
ジャン=マルク・ナティエ マリ=アンリエット=ベルトレ・ド・プルヌフ夫人の肖像 1739
         ジャン=マルク・ナティエ マリ=アンリエット=ベルトレ・ド・プルヌフ夫人の肖像 1739
    

*松方コレクションとフランス近代絵画のエリア:

ここには、ドラクロワ・クールベ・ミレー、ブータン、マネ、ピサロ、ルノワール、セザンヌ、ゴーガン、ゴッホ、シニャックなど19世紀から20世紀初頭にかけてのフランス美術史を代表する作品が見ることができます。

何と言っても素晴らしいのは、人気NO.1のクロード・モネの「睡蓮」です。
館内はフラッシュoffにしておけば、禁止されている作品以外はすべて撮影OKなので、好きな絵をカメラや携帯に収められるのもいいですね。

                    モネ 睡蓮 1916

                          クロード・モネ 「睡蓮」 1916

*モネは、日本風に造成した庭園に睡蓮を浮かべ、この連作に没頭していく。そして、時とともに移り変わる池の様子、水面の反映と鮮やかな花の美しさを描き出してゆく。この作品は、モネ晩年の「睡蓮」に属すが、その中でも最も優れたものの一つである。

      クロード・モネ 舟遊び 1887             黄色いアイリス 1914-17年ごろ
                モネ 舟遊び 1887                  モネ 黄色いアイリス 1914-17頃


 ゴッホの絵もありました。これは、1889年にゴーガンと別れ、サン=レミの精神療養所へ移ったゴッホが描いた作品。

                    ゴッホ ばら 1889

                      フィンセント・ヴァン・ゴッホ 「ばら」 1889

*当初、病院の医者はゴッホの行動と制作の範囲を病院の庭に限定したため、5月の間はもっぱら庭のモチーフを描いたようだ。
 ゴッホの作風は、ゴーガンと離れたことで、彼の影響下で生まれた平面的な様式から、ゴッホ本来の粗い筆致に次第に戻っていく。しかもその後のサン=レミ時代にはっきりと現れてくる「うねるような」筆致を並置する彼独特の技法もすでにここに窺うことができるのである。


 気になった作品は数々ありますが、こちらのドニの作品はあどけない子供の表情やしぐさが、とても可愛かったです。この絵の制作された1890年は、ドニが初めてサロンに入選し、続いて「絵画とは、一定の秩序のもとに配された色彩によって覆われた、平らな面であることを忘れまい」という、有名な絵画の定義を含む論文を発表した重要な年なのだそうです。ドニといえば、またまた余談ですが、あの「ジョジョの奇妙な冒険」の作者、荒木飛呂彦さんも、「日曜美術館」というTV番組で、色使い(特にピンク色)や家族をテーマにした作風が好きだとおっしゃってました。荒木さんの絵は私も大好きなので、横に載せてしまおう。

  ドニ 雌鶏と少女 1890     134294609694113114515_pos03.jpg

モーリス・ドニ 「雌鶏と少女」 1890              荒木飛呂彦 jojo(ドニとの共通点は?)
                                  国立西洋美術館にこの絵はありませんよ


                                
【その他の展示作品】

    セザンヌ 花と果物がある静物    ルノワール アルジェリア風のバリの女たち

        セザンヌ「花と果物がある静物」         ルノワール「アルジェリア風のバリの女たち」


  モロー 牢獄のサロメ       ルノワール 花と果物のある静物

           モロー「牢獄のサロメ」                 ルノワール「花と果物のある静物」


ヨハネの首を求め、男性を破滅へと導くファム・ファタルの代表としてのサロメを描いたモローの絵。素敵ですね。また、セザンヌ、ルノワールの同じ題名「花と果物のある静物」の2枚の絵を見比べてみるのも楽しいです。


*20世紀絵画のエリア:

ここには、ドラン、マルケ、ピカソ、スーティン、レジェ、エルンスト、ミロといった画家たちの作品がありました。

   1953フェルナン・レジエ 赤い鶏と青い空       ジョアン・ミロ 絵画 1953

      フェルナン・レジエ「赤い鶏と青い空」1953           ジョアン・ミロ 絵画 1953                  

*レジエの赤い鶏と青い空》は、第二次大戦の戦禍を避けていたアメリカから母国に帰った晩年のもので、空の青と鶏の赤、自然と機械の断片といった取り合わせに、彼のコントラストの理念が生きている。
また、ミロの作品では常に自然に基づく象徴的記号が登場する。この作品でも、太陽や星を示す記号が極めて単純化されて、画面の重要な構成要素となっている。

 どららの絵も、先の時代の作品よりも、色彩やコントラストが、はっきり、くっきりで、造形もより単純化されて、自由な感じがしました。

 ここに載せたのは、展示物のごくわずかで、途中で余談も入れてしまいましたが、こんなに安い観覧料でこれだけの名画が日本にいながらにして見れるなんて、本当に素晴らしいです。色々な美術館で企画展は数々ありますが、やはり観覧料はちょっと高い。
 故松方幸次郎が、これらの芸術品を収集する際の目的は、自分のためのコレクションではなくて、日本の若い芸術家や人々に、海外の素晴らしい作品を見てもらうためだったそうです。
有難う!松方さんと言ってしまいたくなりました。


国立西洋美術館 常設展のHPはこちら

     

宝塚 初観劇 「モンテクリスト伯」


5/19(日)東京宝塚劇場に宝塚歌劇を観に行きました。人生初の宝塚体験です
かつて、ベルサイユのばらで一世を風靡した時に、行きそびれてから幾歳月か……やっと希望が叶いました。

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今回の演目は、宙組公演の「モンテクリスト伯」とレビューの「Amour de 99!!-99年の愛-」

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 ストーリーはこんな感じです。
「モンテ・クリスト伯」は、「岩窟王」としても知られ、あの「三銃士」でも有名なA・デュマの名作。19世紀初頭のフランス、若き一等航海士エドモン・ダンテスは、美しき婚約者メルセデスとの結婚も決まり幸せの絶頂にあった。だが彼に嫉妬する人物によって身に覚えのない罪を着せられ、孤島の監獄に投獄される。そこを脱獄後、ダンテスは、モンテ・クリスト島の財宝を手に入れ、モンテ・クリスト伯爵となり、彼を絶望のどん底におとしめた人々に復讐を開始する。

 キャストです。主人公のダンテスとメルセデス以外は総じて悪役という舞台でしたが、このポスターの下段の悪役、ダングラール、ベルツッチオ、フェルナンの3人組が揃い踏みした場面が、皆さん長身で声にハリがあって、目茶目茶、かっこ良かったです。どの方にも私は全く事前の知識がなく初対面でしたが、それもけっこう新鮮な驚きがあって良かったのかも。

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「モンテクリスト伯」の原作は読んだことがありませんでしたが、今回の宝塚公演では、劇中に現代の子供たちに「モンテクリスト伯」を解説する先生の説明が入ってきたりで、19世紀のフランスの雰囲気にどっぷりと浸りたい方は、ちょっと違和感があるかもしれません。濃厚な舞台演劇を望む方には軽すぎると思う人もいるかも。
 ただ、この解説が入ることで、物語の展開を早く分かりやすくしているのは確か。若いファンにも親切な舞台だなと思いました。最後まで飽きさせず、軽い笑いもあり、モンテクリスト伯とメルセデスの愛も描かれていて、素敵度は高かったです!

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ポスターのキャッチコピーにもある「私から憎しみを奪うな。たった一つの生きる証なのだ」の台詞(劇中歌の歌詞にもありました)が、すごく効果的に使われていて、うっとり。

「待て、そして希望せよ !」
 これは、原作のラストシーンの有名な台詞ですが、”辛い時こそ待って絶望することなく 希望をもて”という、この作品のメインテーマが、宝塚の華やかさによって、彩を添え、舞台を引き立てていました。

 そして、レビューの「Amour de 99!!-99年の愛-」は、豪華、優美、夢の世界を彷彿させる本当に煌びやかな舞台でした。
 これは、99年という長い歴史の中で、これまで宝塚歌劇が繰り広げてきたショー、レビューの名作、名場面の再演を盛り込んだ、華麗なステージ。
 宝塚ってほぼ1世紀に渡る歴史をもっているんですね。それにも驚かれます。
 1時間ほどのレビューの中で私が一番、好きだったのは、男役さんが手に紅い薔薇、タキシード姿で階段で踊るシーンでした。これに惚れなきゃ女じゃないよ!(笑)そこはかとなく妖艶さが漂うのは、女性が演じる男役ならではの色気なのでしょうか。独特の世界に酔いしれました。
 また、別のシーンで歌が圧巻の役者さんがいて、何? この歌唱力!?と、面喰ってしまいましたが、この役者さんは、美穂圭子という方で、組ではなく特定の組に所属しない一芸に秀でた生徒の集団である”専科”という組織の人だそうで、そういう人もいるのかと驚いてしまいました。色々と知ると面白いものですね。

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「モンテクリスト伯」「Amour de 99!!-99年の愛-」ともに宝塚歌劇の”王道中の王道”という感じでまさに観て魅せられた! そんな宝塚初体験でした。意外と男性客も多く、オタクっぽい人もいて、オペラグラス片手に女役に見いる姿には、AKBファンと同じようなノリだなと、ちょっと引いた(笑)
聞いた話では、演目によって客層も色々と変わるそうです。日本の戦時中の話などだと、年配の男性客が増えるとか。男性客といえば、手塚治虫さんも宝塚の大ファンで、”リボンの騎士”はその影響を受けて描いた作品と聞いたことがありました。
最近では「銀英伝」「BJ」「戦国BASARA」など、新しい演目も次々と上演されているようなので、次は応用編? の舞台も観てみたいです。

おまけの映像。
宝塚劇場で販売されているお土産です薔薇の形のクッキーなどもありましたよ。

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テーマ : 演劇・劇団
ジャンル : 学問・文化・芸術

プロフィール

kazanasi

Author:kazanasi
絵画、小説を中心に観たり読んだり、自作で作ったり。サブカル全般に興味があります。暖かい時期には山登りもします。アナログとデジタルの間を行ったり来たりしてる人間です。


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